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4 - 光

 五十嵐春登は教室内で自然に形成されるスクールカーストのようなものにうんざりしていた。声がでかくて圧の強い人間が、好き勝手振る舞うことをまるで誰かから許可されたように騒いだり廊下にたむろしたり人のことを馬鹿にしたりする姿を見て信じられなかった。五十嵐は隣の市から電車で高校に通ってきている。近所に住む一つ上の幼馴染みが通っていて、話を聞いているうちに憧れた学校だ。五十嵐が住む場所は高校がある市よりも田舎で、中学校も不良なんかいない牧歌的なところだった。それが高校に入ると、不良ではないにしてもなんだか派手でギラついた人間が多くて驚いた。なんなら幼馴染みも高校ではギラついた側だった。校内の渡り廊下なんかで出くわした幼馴染みがいつも通り挨拶してくると、幼馴染みの周りにいる人たちから好奇の目を投げられて居たたまれなかった。幼馴染みはそんなことに気づいていないようで、いつも通りの優しさをいつも通り受け取れないことに申し訳なく思ったりもした。

 だから高嶺に声をかけられたときも、思わず心の防護扉を閉めた。高嶺は派手でギラギラしていて人の中心にいる。本当は隣の席になったときに内心うんざりしていた。授業の間の休み時間の度に、取り巻きたちが席の周りにやってきて騒ぐからだ。高嶺自身は率先して騒ぐタイプではないが、にこにこヘラヘラと中心に座っているので、五十嵐からすれば好ましくない人物だった。それがあの日、初めて高嶺から声をかけられた日から少しずつ変わっていった。それは、同じバンドが好きというだけの単純な仲間意識ではない。一対一で話すときの高嶺はトーンをこちらに合わせてくれて、にこやかで、フレンドリーだけど踏み込みすぎない。毎日ではなかったし、一回一回がほんの短い時間だったけど、それでも彼の周りに人が集まる理由がよく分かった。

 とは言え、五十嵐は高嶺との関係について、まだ友達でもないものだと考えていた。同じクラスで迷いなく友達と言えるのは、まだ最初に前後の席だったやつくらいだ。穏やかな性格の男ですぐに仲良くなれたし、話のテンションが似ているので話していて気楽だ。席替えで少し離れてしまったが、休み時間で隣の高嶺の周りに人が集まるのから逃げるように、その友達の席へと移動していた。宿題の話とか、ゲームの話とか、ありふれた話をぽつぽつとしながら高嶺を中心としたワイワイを眺めていると、同じ教室にいるのにひどく遠い人間だと感じる。そして、高嶺が放課後になる度に気まぐれに声をかけてくることが、非現実的なことだと思えてくるのだった。



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