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1 - prologue




 君といた季節

 君がいた景色

 それは確かに人生の春だった。

 眩い光が降り注ぎ、肌を撫でる風が優しかった。

 心地よい春は一瞬で過ぎ去った。

 まるで夢幻みたいに、失ってしまった穏やかな時間。

 だけどあの時間があるから、俺は生きていける。

 凍えるような長い冬で、暖かな思い出を抱きしめて。




***




 その姿を見て、五十嵐は驚いた。

 高校時代と変わらぬすらりとした長身。一回り大きくなったように見えるのは、体を鍛えているからか、その存在感からか。逞しい肩と適度に厚みのある体が、仕立ての良いスーツを一層美しく見せる。艶のある黒髪はワックスですっきりとまとめられて、美しい額と凛々しい眉を引き立てている。明るい照明の光を受けて、伏せられた目を縁どる長い睫毛とすっと通った鼻筋が顔に影を落としていた。なんの感情を持っていなかった唇は、人から声をかけれられれば一瞬で柔らかな笑みを湛え、微笑みかけられた人間を見惚れさせている。五年前と変わらぬ――あるいは一層磨きのかかった――輝きを放つ美しい人間、それが高峰優希(たかみねゆうき)だった。

 五十嵐が驚いたのはそこに高嶺がいたことではない。

 五年が経ってなお、高嶺を見て胸を高鳴らせている――――自分自身にだ。





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