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恋の階級

 俺の日課は、朝6時に起きて、直ぐに清掃作業、その後食堂でとても嬉しいタダ朝食、洗面等、8時に総務部でシズさんから作業指示を受けて働き始める。12時に昼食、13時から作業を再開し17時に終了する。早めの夕食を取ったら直ぐに夜間学校に行き、20時頃帰って22時にはベッドにもぐりこむ。

 これが月曜日から金曜日まで続き、土曜、日曜は、特に何もない。ついでに給食もなし、悲しい。

 大部屋のメンバーは色々な人種と色々な年齢である。

 魔族はオークとオーガが1人ずつ。ゴブリンも俺だけ。後は獣人、犬が二人、ネコ、狸、トカゲ、ネズミは、それぞれ1人ずつ。部屋長である犬獣人のゴンが親切に色々と教えてくれた。

 他の住人達もマウントを取りにくるような事もなかった。みんな良いやつだと思う。ゴブリンの社会とは違うようだ。

 小僧ばかりの部屋だと想像していたが、結構年のいっている奴もいる。何の統一性もないと思ったが、みんな独身であることが分かった。彼女ができたら、こんな所で寝泊りするわけないよな。

 もう一つの大部屋についての紹介はなかった。多分女の子用の部屋なのだと思う。とても気になる。同室の彼らは気にならないのだろうか。後で聞いてみよう。

 またここにいられるのは3年ほどだ。使い物にならない者は追い出され、使える者は転勤または、出向させられるらしい。ということは支店があるのだ。金貸業は儲かるのだな。従業員の女の子もやたら綺麗だ。どんな阿漕(あこぎ)な商売をしているのやら。

「これ越後屋、そちも悪じゃのう。」「いいえ、お代官様ほどでは、ひっひっ・・。」昔村で見た旅の紙芝居を思い出した。たしか、シリーズ物だった。最後はどれも主人公に成敗されて終わり。

 このままでは、この店も危ないのでは?

 しかし、将来の事など今の俺には心配する余裕などない。可愛い彼女をゲットする。この目標を達成するためにがんばるのみだ。

 しかし、越後屋さん所の従業員はどうなったのか紙芝居のおやじに聞いとくべきだったと少し後悔した。

 俺は同室の鼠の獣人と親しくなった。彼とはベッドが近いせいか色々と話をするようになったのだ。

 彼の名前はハム太である。誰が何を思って付けた名前なのか容易に想像がつく。

「なぁ、ハム太。もう一つの大部屋、気にならないか。」

「なるなる。この部屋の者で気にならない奴はいないさ。」

「でっ、みんなどうしてんの。告白とかデートの誘いとかやらないのか。」

「もちろんやるさ。そして身の程を知るのさ。」

「ああ、やっぱりそうだよな。この部屋にいると言う事は、まだ半人前であると言う事だ。」

「でも、彼女らは強かで、すぐには切り捨てないんだよ。好みであったり、将来性を嗅ぎ分けてキープするような事をする。」

「キープって、何だよ。」

「要するに友達だな。一概に友達と言っても色々ある。階級があると言ったほうがいいか。まずは二等兵友達、これは断る言い訳の友達、すぐに名前も忘れられてしまう。次に一等兵友達、これは知合い程度の友達、次に上等兵といった具合に段々と彼女たちにとって大切な友達になっていく。」

 見かけによらずハム太は博識だ。心の中で彼を「恋の伝道師」と呼ぼう。

「ハム太は、とても詳しいな。それでアプローチしたことがあるのか。」

「ある。」

「それで階級は?」

「一等兵。」

「きびしいな。それでハム太にとって彼女の階級はどのくらい?」

「将軍様。」

ベタ惚れだな。彼の事を心の中で「恋の伝道師」改め「恋の一等兵」と呼ぶことに改めた。

「それで、将軍様って誰だよ、教えろよ。」

「言ってもリン太には分からないだろう。ここに来たばかりだから。」

「そりゃそうだけど、そのうち教えろよ。」

「ああ、そのうちな。」

 ハム太は眠たくなったのか。ベッドの毛布を頭からかぶり、それっきりものを言わなくなった。

 俺も眠たくなってきたので目を閉じると直ぐに意識をなくした。

 外からはコウロギの鳴き声が聞こえたような気がした。

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