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金貸し屋

 ついさっき目を閉じたと思ったが、目を開けるともう明るくなっていた。朝がきたのだ。

 今日は昼頃店に行くのだから、少しだけでも小綺麗にしておいた方がいいよな。

 俺は、近くの小川で水浴びと洗濯をするついでに、食べるものを探すことことにした。魚とまではいかないとしても、何か口にできる物がほしい。

 着ていた服を洗い木の枝に干した。ふりチンになった俺は、そのまま川の中に入り、水中の岩の陰などを探索した。

 魚はいた。でも俺に捕まえられそうな魚はいない。でも巻貝もいた。

 これを数個拾って鍋にいれて鶏肉と一緒に煮てみた。

 美味い。心が幸せを感じている。腹ペコだとこんな食事でも幸せを感じることができる。これは良いことなのだろうか。

 少し、心に余裕ができた僕は、ふりチンのまま川岸で食事をしていると、ふと川に関する物語を思い出した。

 遠い国では昔、お婆さんが小川で洗濯をしていると大きな桃が流れて来たそうな。その桃を割ると中なら元気な男の子が出てきた。

 その子は成長してサル、犬、キジと供に川を(さかのぼ)り、山の鬼を退治したそうな・・・。とても物騒な話だ。

 これはゴブリンに対する教訓だな。なんでも川に捨てるなという戒めだ。それとも川で洗濯すれば食い物が流れてくるかもしれない。俺も洗濯した。

 あるいは、山で(いじ)められていた者が、山から下り流れてきて成長し、傭兵を雇い山に戻り、復讐した。と言う実話なのかもしれない。

 まあ何にしても、今の俺にはあまり利益を生まない話だな。いつまで待っても、食い物が流れてくる様子もないので、鍋を川辺の砂砂利(すなじゃり)で洗い流し。乾いた衣服を身に着け荷物をまとめた。

 ちょうど昼に近かったので店に行く事にした。


 店に着いた俺は、昨日と同じ可愛い受付嬢に言って、バンを呼んでもらった。

 「ああ来たかリン太、まずは寝起きする部屋へ案内してやる。ついて来い。」

 俺はバンの後をついて行った。店の最上階4階が従業員の居住区になっていた。大部屋が2部屋、中部屋と個室がそれぞれ1部屋だった。全て同じ広さなのだが住んでいる人数が違っていた。大部屋は9人、中部屋は2人、個室は当然1人である。

 俺は大部屋につれていかれ3段ベットの一番下のベッドをあてがわれた。

 部屋には、3段ベットが3台、共用のハンガーが2台、個人用の蜂の巣のような棚が9個壁に設置されていた。残りのスペースは9人が横に並んで着替えができるギリギリの広さである。

 俺は荷物を棚に置いて、ハンガーに掛けてある俺用に用意された、従業員用の服に着替えさせられた。

「サイズはあっているな。古着だが丁寧に使えよ。この服を着ている者は社員食堂のめしがタダになる。汚いと食堂から追い出される。」

「素晴らし服ですね。」

 町を歩く人達と比べ少しダサイと思うが言わないでおく。

「そうか、それは良かった。だが、タダで食わしてくれると思ったのなら、間違いだと直ぐに気付くだろう。」

「脅かさないで下さい。僕、頑張ります。」

「では早速だが頑張ってもらおう。リン太、今からお前の仕事は清掃だ。この店の全ての場所を清潔に保つことがお前の仕事だ。清掃関係のリーダーを紹介してやるからついて来い。」

「はい!」

 やったー。こんなに綺麗な店、もう何処も掃除するところなんかないじゃないか。楽勝だ。

 俺たちは階段を下り三階フロアの事務所に入る。このフロアもピカピカだ。

 「シズさん、昨日言っていたゴブリンのリン太をつれて来たよ。しっかり仕込んでやってくれ。」

「分かったよ。リン太、おまえ見どころがあるんだって、私がコッキー使ってやるから頑張りな。」

「よろしくお願いします。」

 少し不安になってきた。シズさんは犬の半獣である。年齢はおばさんと呼んでも怒らないぐらいだと思う。そして何よりも目が鋭い。眼鏡の奥で光る眼力が怖い。そしてエロい。犬のおばさんなのに色っぽい。タイトなスカートが形の良い尻を見せつけている。

「では、ここの生活と清掃作業について説明するから良く聞きな。質問はその都度でいいから何でも聞いていいぞ。」

 この店の基本的な清掃は、大部屋の従業員達が実施する。

 朝6時に起きると同時に始まり、20分ぐらいでやってしまう。

 シズさんはその監督者であること。朝の清掃以外の清掃作業は、シズさんの整備計画によるメンテナンス的な作業が行われる他、各部署からの要望にも対応している。

 これらの作業はアウトソーシングであったり、各部署から作業員を徴収する事により実施している。

 そして俺は、シズさんの手足となり働くこのになった。怖いけどエロいので嬉しい。

「朝の清掃作業については部屋の者に聞いてもらうとして、今から早速実施する事はこの建物の設備と物の点検だ。」

 シズさんは、机に図面を広げ、説明を続ける。

「この図面は今お前がいる三階フロアの図だ。この部屋には、机と椅子の並びが3条あるだろう。向こうから融資鑑定部、総務部、人事教育部と並んでいる。壁を隔てて役員室がある。何の事かさっぱりだろうが、直ぐに場所と名前は覚えてもらうぞ。」

 そして、1階の営業部、2階の食堂、会議室等、その場所と役割を簡単に説明された。

 図面を手に取ると、シズさんはついて来いと言う。すでに俺の頭の中はいっぱいであったが、ふらふらとシズさんの後を付いて行く。

 シズさんは、図面に何かを書きながら、どんどん進んで行く。字が読めない俺は、シズさんが何を書いているが解らないが、多分設備や物品の状態を記入しているのだろうと思う。

 俺はその場で働いている人たちを、ちらちらと見ながら、シズさんの後を付いて行く。

 大体半分は女性が働いている。それもみんな綺麗な女性である。

 やっぱりここに来て正解だ。

 想像していた強面(こわおもて)のお兄さんはいないらしい。取り立てはアウトソーシングかな?

 

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