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旅の食事

 俺はトボトボと歩いている。何キロも進んでいない。

「腹減った。」まずはメシだ。

 僕はグルメだが好き嫌いは少ない方だ。バッタもコウロギもいける口である。もちろんその子供たちである芋虫、蛆虫たちも美味しくいただきます。

 採集するにしても、村にいる時は誰かがやるだろう思い、あまりやる気が出ないものだ。

 しかし、自分一人だと積極的に行動するのは不思議である。自分しかいないのだから当たり前。そんなことを考えながら足元の草むらをかき分けコウロギを見つけた。

 そのまま口の中に一匹二匹とほり込んで五匹ほど食べたところでコウロギはいなくなった。

 「料理しないのか、どこがグルメなんだよ」と言われそうだが、量が少ない場合は料理すると更に量が減る。

 全然足らないが、こんな所で一生コウロギを食べているわけにはいかないので目的地に向かってまた歩き出す。

 新陳代謝を考えると、このまま1月間もコウロギばかり食べていたら体の半分がコウロギでできていることになる。

 人間のどこかの国で、バッタと人間を組み合わせて改造したヒーローがいたとかいないとか。仮面のりだーとか仮面ライダーとか。ならゴブリンとコウロギの改造人間(改造ゴブリン?)

 気持ち悪い。つまらないことを考えながらまたも歩いて行く。

 コウロギやバッタ、芋虫等、小さな虫は結構楽に捕る事ができた。

 沢山採れた時には鍋で炒めたり煮込んだりする事もやったが、もううんざり。肉が食いたい。僕が捕まえることができそうな肉となると鳥かな。

 このコウロギを餌にして鍋の罠を張る。鍋を小枝で支え、その下に餌を蒔いておく簡単な罠である。

 大切なコウロギを鳥ごときに食べられるのは惜しいが、その鳥を俺が丸ごと食べるのだから我慢するのだ。

 なに、鳥が可哀そう?そのような事はないだろう。鳥はコウロギを食べられて幸せ。俺は鳥を食べられて幸せ。どちらも幸せ。これもWin-Winの関係じゃないか。

 片方の致命的な不幸せは思いつきもしない。だって僕はゴブリンだから。

 5メートル四方の草むらを刈り取り、そこに罠を仕掛ける。俺は草むらに隠れ潜む。

 早速スズメが数羽降りてきて餌のコウロギをつつき始めた。スズメたちは競うように餌を取り合う。その内の1羽が鍋の下の餌をつつき始めた。

 今だ! 

 俺は鍋から伸びている紐を引っ張る。

 「ウッキー」思わず。興奮が声として出てしまった。

 当然、周りのスズメたちは驚いて逃げてしまった。

 でも俺、大興奮!やったー!こんなに興奮したのは初めてだ。

 せっかく捕まえたスズメを逃がさないよう慎重に鍋と地面の隙間に手を差し込み、暴れるスズメを握って取り出す。

 何て可愛くて美味しそうなのだ。すぐに首をボッキンとひねって殺し、腰の袋に入れる。よし次だ。

 しかし、スズメたちは帰ってこない。警戒されたようだ。得たものはスズメ1羽、失くしたものはコウロギ10匹、これは採算が取れているのだろうか。

 あのスズメたちを一網打尽にする方法はないだろうか。

 または、餌のコウロギ1匹にスズメ1羽取る方法はないだろうか。もっとコスパを改善させないといけない。

 例えば落とし穴。コウロギ1匹の下に落とし穴を掘る。コウロギ10匹なら10個の落とし穴になり、一匹に一羽、10匹に10羽の計算。これなら採算は十分に取れる。でも鳥が落とし穴に落ちるわけがない。俺は落ちるけど。

 ・・・楽して沢山食べたい。「腹減った。」

 周りにはスズメ達が「チュン、チュン」と鳴いている。

「スズメちゃん、君たちはとても可愛いね。僕とデートしない。食べちゃうけど」

 あまりにも空腹すぎて我を忘れていた。妄想から我に返るまで少し時間を要したようだ。

 栄養が欠乏した脳味噌だが、必死に絞ると思い付いた。穴に落ちないなら穴に誘い込めばいいのだ。そして飛んで逃げられなくすればいい。穴に降りてきた鳥が翼を広げて羽ばたけなければいいのだ。

 ふっふっ、名案である。穴の天井から竹を何本も氷柱の様にたらしとけば入るときは翼をすぼめて降りてこられるが、飛び立つときは広げた翼が竹にあたり羽ばたけない。僕がスズメなら絶対この罠にかかる自信がある。

 四方2メートル、深さ1.5メートルの穴を掘り天井から0.5メートルの竹を何本も吊り下げた。餌はやはりコオロギ10匹。朝仕掛けて夕方回収でいいのでは。

 少し気が早いが、罠を仕掛けた僕はスズメを料理するため、薪を拾いに森の奥に行くことにした。

 薪を持って罠を仕掛けた場所まで帰ってくると、そこにはスズメではなく、大きなカラスが2羽もいた。

 カラスは僕を見てパニックっている。逃げ出そうと翼をばたつかせるがぶら下がっている竹が邪魔で飛ぶことができない。

 思いのほかの大物に僕も驚いた。

 2羽のうち大きい方を竹で叩き殺し、離れた所で焼いて食べてみた。

 スズメよりは美味しくなかったがコウロギよりはましである。

 食べ残しの肉を袋に入れて僕はいつものように森に入っていった。木の上で寝るためである。

 大きな木の枝に体を縛り付けて今日の事を考えた。

 今日は興奮の連続だった。これで3日分の食料が手に入った。あの罠がとても有効な事も確認できた。

 また、カラスどもが罠の危険性を学習する前に、旅を進めた方がいいとも考えた。


 翌朝また罠を仕掛けた所に帰ってみると、1羽のカラスのはずが2羽に増えていた。餌のコウロギは無いはずだし。もしかしてハニートラップ?

 昨日罠に残していった小さめのカラスは女カラスで、野郎ガラスを罠に引きずり込んだのでは?

 多分間違いない。この女カラスは使える。

 僕は女カラスを生け捕りにし、竹で編んだ鳥かごで飼うことにした。

 よくよく見ると、このカラスはまつ毛も長く色っぽく見えなくもない。残りの野郎ガラスは当然お肉にした。

 今日から種族は違えど、女カラスとの僕の生活が始まるのだ。

 旅の先々で食料が心細くなる前にこの罠を作り、罠の中に女カラスを入れておく。

 女カラスは「カーカー」とよく鳴き、よく働いた。

 僕はご褒美に女カラスに名前をつけてやった。「カー子」

 しかし、カラスの肉も飽きてくる。それで俺はこの罠が他の鳥にも有効ではないかと考え、新しく鍋罠で捕まえたスズメを試してみることにした。

 捕まえたスズメは、オスかメスか見分けがつかないが、それなりに可愛い顔をしているようにも思える。

 この思い付きも大いに当たり、女スズメにも名前を付けてやることにした。「ピー子」

 これで俺のところはハーレム状態となった。

 カー子とピー子は仲良くならない。嫉妬に燃える女どうしなのでしょうか。


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