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男の子の恋は誠実ではない

  ハム太は「よしっ」と言って握り拳を突き出した。寮に帰ってハム太に学校でのことを話したのだ。最初は乗り気でなかったのに今は随分と気合が入っているな。将軍様の事はどうなったのだろう。

「なあ、誘っておいて今更だけどハム太には好きな子がいたよな。その子に対して不義理ではないのか」

「リサの事は好きだ。でも彼女は俺の事何にも思っていないから不義理にはならない。不義理と言えばこれから会ってデートしょうとしている女の子に対しては少し不誠実だとは思う。でも知合いになるだけだからこの場合いいだろう」

「ハム太の将軍様はリサなんだ。それはいいとして、もしデート中カナコ達から好きな女の子いますか?付き合っている人いるのですか?何て聞かれたらどう答えるんだい。好きな人がいるのに他の子とデートしていると思われるよな。」

「リサの事を言ってなかったか。それといい質問だ。このパターンはシュミレーション済みだ」

 またか、妄想済みの間違いだろう。と俺は言ってやりたいが話の続きを聞くとする。

「俺はカナコ達とはまだ会った事がない。それにデートとは好きあっている者どうしが行う行為である。よって今回のデートはデートと言いながらも真実のデートではない。だから俺はカナコ達が俺の好みの女の子であったなら、好きな人はいない、もちろん付き合っている人もいないと答える。俺の好みでなければ付き合っている人はいないが、気になる子はいる。と答える。会った瞬間カナコ達が好きになり、リサの事はどうでもよくなるから嘘ではない」

 思った通り屁理屈ばかりだ。ハム太は営業マンなのに誠実なところが全くない。それとも営業マンだからこそ詐欺師のような思考ができるのかもしれない。好きな人がいるのに進んでお見合いをするようなものだ。

 しかし、これはオスの生理的なものと言える。いつまでも(なび)かないメスに構っていては子孫を残せない。

 またハム太はたかが一等兵である。責任は重くないのである。責任はそれぞれの階級に応して生じる。リサから任命された階級は一等兵。リサもハム太にはどれほどの期待もしていない。

 それはそうとハム太の不誠実は事実であり、これを正当化する事はできない。将来結婚してもあれこれ屁理屈を捏ねて浮気を正当化しようとする男であろう。あまり女性から歓迎されないタイプだと思う。

 不誠実な恋の一等兵に神様が微笑むことは無いように思う。また一等兵認定されて苦しむハム太の姿が目に浮かぶ。

 でもこれこそが大多数の男の子の生き様なのだ。知らんけど。

 暗い未来しか見えないハム太だが、本人の目は輝いている。俺はそんな彼に水を差すような事は言わない。俺が言いたいのはそんな事ではない。

「間違いなくカナコ達は可愛い。ハム太はカナコ達を好きになる。これも間違いない。もちろんリサも凄く可愛いと思うけど、俺の好みで言えばカナコやミサコが可愛い。それから最近気付いた事だが、俺はミサコの事が好きになったようだ」

「何が最近好きになった様だだ。お前が学校に行った初日にミサコの事を好きになった事など話を聞いているだけで解っていたさ。ミサコに手を出すなと言う事だな」

「そっ、そうだな。そう思っている。でも俺たち二人でそんな事を決めてもミサコの気持ちもあるからな。それに俺たちの心も止まらない。そうだろ」

「もちろんだ。早く日曜こないかな」


 俺たちは大部屋に帰って寝ることにした。ハム太と話したことをベッドの上に横になって考える。

「心は止まらない」自分で言った言葉をふり返る。本当に心は止まってくれないと思った直後、お腹の虫が鳴き始めた。お腹の虫は恋より食欲を優先する。先ほどまで日曜が待ち遠しいと思っていたが、朝食が待ち遠しいに変化している心に気付く。まさに心は止まらない。

 俺はすきっ腹を抱えて目を閉じた。外からは野良猫どもが喧嘩している鳴き声が聞こえてきた。あいつらも恋の季節なのだな。そんな事を思いながら俺の意識は睡魔に連れて行かれた。

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