9:カフェがありました。
「マリアーネル様、あの、」
「何かしら。私暇ではないので手短にお願いしたいのだけど」
お腹が空いてるのよ私は。早くして。購買があるのか探さないといけないんだから。
「さっきはありがとうございました!」
勢いよく頭を下げるリアラに一瞬きょとんとした間抜けな表情をしてしまった。まあ実際はそんな驚いた表情はしてないのだろうけど。
「別にあなたを庇ったわけじゃないわ。あの目が痛くなる髪を視界に入れて食事をしたくなかっただけよ」
半分本音。私の言葉にリアラはおかしそうに笑う。何よ。あんたはあの縦髪ロールやらゴテゴテした装飾の髪とか視界に入っても五月蝿くないっていうの。私には五月蝿いのよ。
「用件はそれだけかしら。それならもう行くわ」
「あ、待ってください!」
「まだ何か?」
お腹空いたあああああ。
「あの、お昼、ご一緒しませんか?」
「あの食堂に戻れと?嫌ですわ。それにあなたは済ませたのでしょう?」
「あ、違くて、カフェになっちゃいますけど、よかったらそこで。そこならこの時間はあまり使う人が居ないので。ちゃんと食べてないので足りなくて」
カフェがあるの!しかも人が少ないとか凄い穴場じゃないそれ!早く言って!そして早く連れてって!
そんな気持ちは抑え込んで私は渋々といった風を装い歩き出す。
「あ、」
「何」
「カフェは、あっちです」
少し恥ずかしい気持ちになりながらもそれを見せずに示された方へ行く。もー!!せめて校内地図ぐらい見ておくんだった!そうすればこんな恥ずかしい思いしなかったのに!
「へぇ、本当に人が少ないのね。どうして皆こちらには来ないのかしら」
「こっちは私達みたいのが利用することが多いので、貴族の方は滅多に来ないんですよ」
「そうなの。勿体無いわね。ああでもあなた達が安心していられる場所がなくなるのもよくないし、このままの方がいいわね」
「え…」
「…何か?」
この子は今日やたらとこんな態度だ。正直そんな不思議そうにばかりされるとこちらが変なこと言ったみたいな気がして不快になってくる。こんなおどおどしているから周りがつけあがるのだとも思ってしまう。
お腹が空きすぎて気が立っているのかも。
閑散とはしているものの清潔感はある。机もオシャレだし壁紙も薄い青で下の方は白くグラデーションがかかっており、空をモチーフにしているのだろうかと思えた。
席に着くと女性店員がメモを持って席に来る。
「この時間はランチセットしかないんですけどいいですか?食堂みたいに豪華じゃないですけど」
「構わないわ」
「ランチセットを二つ」
「かしこまりました。今日はご友人となんですね」
「え!あ、友人なんて恐れ多い…!えっと、クラスメイトなんです」
「そうですか。でも良かったです。ごゆっくり」
店員と二言三言交わすのを見て普段はこちらに来ているのだとわかる。あの店員、私と目も合わせなかったんだけど。
この世界の接客レベルなんて知らないけどあれはダメなんじゃない?
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