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episode 9

     Side:九



 男は小屋の隅っこで、膝を抱えて震えていた。


 明らかに何かに怯えているような雰囲気が、俺の考えている事に間違いはないと思わせてくれた。


「聞かせてもらおうか? お前が知ってることを」


「お前、恵那の……」


「ここちゃん、どういう事?」


 俺は美波に扉を閉めるように促すと、続けて質問に答えた。


「こいつは昨日、俺を襲った犯人だ。だろ?」


 男は目を泳がせながら、一つ首肯して見せた。


「えっ? でもやっぱりおかしいよ。だって、ここちゃんこの人が危ないって」


「あぁ。逃げたんだろ? お前は……恵那から」


「えっ? 何で? 恵那ちゃんから逃げる? 意味わかんないんだけど」


「美波、ちょっと静かにしてろ。後からちゃんとわかるように説明するから」


 男は観念したのか、俺を視界に捉えたまま立ち上がり話し始めた。


「あいつは……化け物だ。全部あいつが考えたことなんだ。お前を襲ったのも全部な。俺だってお前と同じ被害者みたいな……」


 俺は言葉を遮るように、男に掴みかかった。


「ふざけんな! 怖くなったから逃げて……その上被害者だって言うのか? お前好きなんだろ? 恵那のこと。だったら、間違ってる道を歩もうとしてるあいつを、無理矢理手を引っ張ってでも止めるのが、お前がするべきことだったんじゃないのかよ!」


「そうだったのかもしれないな。俺は、あいつの笑顔が好きだったんだよ。でも、いつからだったかなぁ、あいつに言われる事を聞いてやる事でしか寄り添うことができなくなった。今更言い訳だよな。悪かったな」


「謝る相手は俺じゃないだろ? 止めるぞ。恵那を」


「でもここちゃん。止めるって言ってもどうするの?」


 俺は男の隣りに立つと肩を組んだ。


「三人で一芝居打つんだよ」


「ここちゃん。背伸びしないと肩組めてないよ」


 つま先立ちの俺は、足がぷるぷるしている。


「俺が背伸びしてやってんの。へくしょん!」


「ここちゃん、鼻水出てるよ」


「汚ねぇなぁ。ほら、ティッシュやるよ」


「おぉ!サンキュー」


「感動してないで、早く鼻水なんとかして! ここちゃん」


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