episode 8
足跡は二つ。あれは恵那とあの男の物で間違いないだろう。
そして、あの手をついた跡。
「お前は一体、何をしようとしてるんだ?」
「ねぇ、ここちゃん。どうしてあの男の人の方を探すの? もし見つかったとしても、私達だって危ないんじゃない? だから恵那ちゃんを……」
「そう。危ないからだよ。このままじゃ、あの男が危ない」
「危ないって、どういう事? 危ないのは恵那ちゃんでしょ」
俺は答えに詰まった。
「とにかく、助けてやろう。あの男と、それから……恵那も」
Side:美波
ここちゃんはまるで、全部分かっているみたいだった。
私はそれを理解したからこそ、悲しそうな顔をしているここちゃんが心配になった。
「そうだね。助けてあげよう。私達の手で」
ここちゃんにいつもの優しい笑顔が戻った。
「恵那はきっと苦しんでる」
「ここちゃん、小屋に向かって歩いてる人! あの人そうだよね」
きょろきょろと辺りを気にするように、男は一人小屋へと入って行った。
「いくぞ、美波。あの感じだと恵那はあそこにいない。男から話を聞こう」
私とここちゃんも周囲を気にしつつ、男の人が入って行った小屋へと向かった。
「……足跡は一つ。行くぞ、美波。お前は俺の後ろにいろよ」
そう言うと、ここちゃんは小屋の扉に手を掛けた。




