episode 12
Side:湊
俺は九に言われた通り、社へとやって来たのだが、恵那の暴走を止めることは出来そうになかった。
押し倒された俺は、歪んだ笑みを称えた恵那に見下されたいる。
「恵那。もう終わりにしよう。このままじゃ本当に、後戻り出来なくなる。居場所が無くなるぞ?」
「……だから言ったでしょ。邪魔な奴は、消しちゃおうって」
足元に転がる石を両手で持つ恵那の瞳には、希望という名の光が失われていた。
「頼む! やめてくれ! 恵那!」
ギギギギギ────
木戸が軋む音を立てながら、ゆっくりと社が開いていく。
その光景に恵那は驚き、顔ごと視線を移したのを見て、俺は隙をつくと立ち上がり距離を取った。
「どういうこと! 何で狼神様がここにいるのよ。だってあれは……」
恵那は俺に説明を求めるように一瞥をくれた。
俺は倒された衝撃で挫いた足を引きずりながら、社に背を向け、恵那と対峙した。
「湊! あんた、私を騙したわね!」
怒りの感情に憑かれたかのような恵那は、今にも俺に、いや、俺達に襲い掛かろうとしている。
「こうするしかなかったんだ。俺はお前を助けたいんだよ!」
「この期に及んで、まだそんな寝言みたいなことを。諦めなさい。もうあんたが望むような未来は来ないから! 後ろのあんたもいい加減正体を見せたらどうなの?」
社の中、狼神様の出で立ちの者は、一歩ずつその姿を現す。
俺は恵那から目を逸らさず、半身になると、狼神様が通る道を開けた。
「信仰の対象の狼神様を使い、これ以上、罪を重ねる行為を見過ごす訳にはいかない。湊、あとは任せろ」
仮面により声が籠もり、恵那はその正体に気付いていない様子に見えた。
狼神様は仮面に手を掛けると、勢いよく剥ぎ取り、こう続けた。
「真相が俺の背中を押してくれる」
「…………こ、九君」




