第73話 人数減っちゃった。けどがんばって探すよ!
サーラは衣装の製作があるからと、放課後の部活を放棄して帰ってしまった。
部室にぽつんと残るのは、カレンとクローディアの女子2人である。
男子部員たる2人、エルネストは生徒会、シュタイニーも今日は武術部に顔を出さないとまずいという事で、欠席である。
朝の大人数から一気に2人に減少した。ちょっと寂しい。
まあいい。1人ではない。
もしゅりと昼のサンドイッチを頬張るクローディアである。
「カレン様、今ほどご一緒出来て、頼もしく感じる瞬間はございませんわ」
「‥そうか」
カレンも昼食の残りのパンを口に入れる。
そして2人で紅茶で一息ついたところで、立ち上がった。
「時間があるうちに、荒ぶる場を探しに参りましょうか」
奉納舞の槍パートは後でね。
「そうだな。奉納舞の稽古で大幅に時間がとられるかもしれないからな。早めに探さないとな」
カレン、それは言ってはいけない。言霊は真実になってしまう。
「と、ともかく、学院のめぼしいところを見て回りましょう!」
幸い、我々には各人で書き写した地図がある。
きっと役に立つと、学院の敷地内の大まかな地図を書き写していたのだ。
その地図を頼りに、2人は学校内のめぼしいところを回って行く。
最初は手始めに、今いる音楽棟である。今の時間自分たちと同じように部活をしている為、にぎやかである。
カレンには、ゾルジ製のモノクルを渡し、付けてもらっている。
後でサーラに文句を言われそうだが、認めない。
今日であればシュタイニーもいないし、サーラにもモノクルを貸せたのに、その権利を放棄して風のごとく帰ってしまったのだから。欲しいものは同時に2つ手に入らないのである。
クローディアは自前の目を開眼して探索中である。
「あ」
「どうかしましたか?」
カレンが何かを見つけたように声を上げる。
そこはダンスホールだ。廊下側の窓から中が見られるようになっている。
50人は優に踊れるだろう大きな部屋。その隅にはピアノがある。
規模もおそらく部費も段ちなのだろう。
その大きな部屋で、女の子同士で踊っている。
ダンス部に入る男子は殆どいないようである。
カレンはホールのある一点を凝視している。
カレンの目の先を辿ると、そこには一人の少女が佇んでいた。
皆が楽しそうに踊る姿を寂し気に見つめている。
「あの子がダンスホールの怪か」
「そのようですわね」
カレンの呟きに同意する。
おそらく、カレンとクローディア以外、彼女が視えていないのだろう。
2人が視つめる中、ぶつかるっと思った女子生徒が、彼女を通り抜けていく。
誰も彼女に気づいている様子はない。
「なんとかしてやりたいな。やりきれない」
そこにいるのに、いない。
寂しそうに佇むその姿が憐れだ。
「そうですわね。次の怪は彼女にしましょう」
「そうだな」
今クローディアたちがしてあげられることはない。
気づいてしまっただけに、申し訳ない気持ちもあるが、やりかけの課題がある。
そちらを優先させてもらう。
クローディアとカレンはそっとホールから離れた。
気づいてもらえないと寂しいですよね。




