第63話 妖精さんの魅力恐るべし。でもうちの子が一番だ!
上々の収穫を得て、森を後にした4人。
1人は蜜に代わりなる甘美なるものを考え、後の3人は花の妖精に心を奪われており、どうにも部活動を続けられる状態ではなかった。
その為、部室に帰り、クローディアと花の妖精とのやりとりを共有した後は、解散と相成った。
クローディアが話した内容は部にとって重要なものであったが、妖精の可愛らしさに魅了された3人は妖精のしぐさや細部言葉尻などまで聞きたがったが、それを振り切ってクローディアは帰宅の途に就いた。
クローディアには考えなければならない事があったからだ。そう、蜜の代替品である。
サーラ、カレン、シュタイニーの3人にも、蜜の代替品を考えてくれるように頼んだが、妖精に魅了された、ぽやっとした頭ではどうにも頼りなかった。
花の妖精が超絶にプリティだったのはわかる。ポーとなるだろう。
サーラやカレンは初めて妖精を視たのだから。なおさらである。
シュタイニー真実の鏡の妖精を視ているのに、すっかり花の妖精に魅了されてしまったようだ。可愛もの好きがサーラとカレンにモロバレだがいいのだろうか。まあ2人はそれを言いふらすようなことはしないだろうが。
とにかくも明日は幸か不幸か陽の日で学院は休みだ。
3人の沸騰した頭を冷やすには丁度いいだろう。
月の日までに、妖精への熱が下がってくれるのを祈るばかりである。
家路へ急ぐ揺れる馬車で、今日森であった出来事を手紙に書き、エルネストへと送る。彼にも蜜の代替品についての案を頼んだが、忙しい身であるので、難しいだろう。
休日でも侯爵家のご子息は忙しいからね。
やはり頼れるのは。
「ゾルジとララね」
うむ。良き相談相手に恵まれ、私は幸せである。
<おかえり~!クローディア~!>
ガーブス家の屋敷の中庭。
そこに足を踏み入れるとすぐにララが出迎えてくれた。
はあ。癒しである。花の妖精も可愛かったが、ララはもっと可愛いと思う。
やっぱりうちの子が一番である。
決して身びいきではない。
うむ。
<して、どうだった>
木から降りて来たゾルジがテーブルの上で尋ねてくる。
はあ。ゾルジも凛々しいよね。そして優しい。
<クローディア~、かなり疲れているわね~。きっと頑張ったのね>
ララは椅子に座ったクローディアの頭にのり、いいこいいこをしてくれる。
うっ。やめて。涙で前が見えなくなるからっ。
クローディアはぐっと喉の塊を紅茶で流し込むと、頭を切り替えた。
はあ、紅茶美味しい。
そして帰るとすぐにお茶をさっと用意してくれる、うちのメイドさん最高だ。
ほっと一息ついたクローディアは、早速ララとゾルジにも森での出来事を話して聞かせた。
<なるほどのお。蜜の代わりか。とすると、甘味であろうの>
ゾルジが器用に前足を曲げて、顎に当てる。
<そうね~。さらりとして甘いものよね~>
ララもクローディアの肩の上で首を捻る。
2人にそう具体的に必要な要素を言われて、クローディアは思いついた。
前に父に連れられて遠くの地に行った時に、食べた事があるものだ。
ただ、材料も珍しく、また手間もかかる為、滅多に作る事がなかった。
「ちょっと、2人とも待っていてね、リフティン!」
クローディアは立ち上がると、小走りに屋敷へと入った。
「はい。お嬢様、お呼びでしょうか?」
「お米と、乾燥した麦芽が欲しいの、急ぎ用意できる?」
「乾燥麦芽はうちの商会にあるので、大丈夫ですが、米ですか。王都では米は食べませんからね。よく家畜のえさに使われますが、さて」
「前に叔父様からもらった事があるわ。難しいかしら」
手に入らなければ、別のものを考えなければならない。
「わかりました。急ぎ店に使いを出して、旦那様に聞いてみましょう」
「お願い」
「かしこまりました」
リフティンは一礼するとさっと踵を返した。
ああ、叔父が商会してて、本当よかった!
「どうかありますように」
頼むよ。ニコル叔父。
そう願いながら、中庭へと引き返した。




