第53話 なぞなぞ?
<うーん。そんなに安心した顔されると、なんかやめたくなくなっちゃったなあ>
しまった。妖精との交渉は最後まで気を抜いてはいけなかった。
特にこの妖精は性格が悪そうだと思っていたばかりなのに。
クローディアは急いで顔を引き締めたが遅かった。
<でも~。やめてあげると言っちゃったからなあ。でもあからさまに安心されるとつい困らせたくなっちゃうんだよねえ、僕。そうだ!>
そこでいい事を思いついたというように、ポンと手を打った。
<今から言う事をやってくれたら、やめてあげる! うん! そうしよう!>
くっ! 後悔先に立たずである。無条件が条件付きになった。後悔しても後の祭りである。
こうなったら仕方がない。それを聞くしかないだろう。
約束が違うと文句を言って、これ以上こじれたら大変である。
「‥何をすれば、よろしいのですか?」
いらだちを堪え、クローディアがこう。
<ん~! いいねえ、その表情! さっきの百面相よりずっといいかも!! きゃははは!>
この妖精の言葉は、先の第3音楽室の妖精の悪口よりもたちが悪い。
<じゃあ、伝えよう! よ~く聞いてね!>
そうして妖精は歌うように告げる。
汚れし水に咲く、清廉の白き花。暁に染まる時、蜜を乞え。
この地荒ぶる場を、鎮めよ。そこに眠りし者に蜜を。彼のものの目覚めを誘え。
はあ? 何の言ってるのかさっぱりわかりません。
「あの、申し訳ございません。何をおっしゃられているのか、わたくしわかりません。もう少しわかるようにご説明願えないでしょうか?」
正直に伝える。うん。これ大事。
<あはは! それじゃつまらないじゃないか! 簡単ななぞ解きだよ! 簡単すぎて笑っちゃうだろう? いや、謎にもなっていないね! 単に詩的に言葉を並べただけだから! 僕って優しいよねえ!>
いや、わからないから! ここにポエムいらないから!
<今言った事をやってくれれば、やめてあげるし、更にいい事もあるよ!>
「いい事ですか?」
なんだそれは。
<うん。僕が今ここでいたずらをやめても、この鏡の中に溜まった陰の気が悪さをするかもしれないんだよね~。それが回収されなければ、僕がいたずらを辞めたところで、鏡は陰の気を邪気に変換して、僕以上に人間に災いをもたらすようになるかもしれないよ。そうなったら、僕では手に負えないかも~。困っちゃうよね~。まあ、その陰の気を溜めたのも、僕なんだけどっ。あははは!>
何この妖精。後出しでぶっちゃけてくれた。
つまりこの妖精、自分の尻拭いを私たちにさせようとしているのか。
ぐぬぬ。しかし怒れない。
へそを曲げられたら、事だ。
解決の目途がなくなってしまう。
<けれど、もしさっき僕が言った事をやってくれれば、この鏡に溜まった陰の気も解消できるよ!>
「本当ですか?」
<うん! 本当だよ! それで君の望みも叶う!!>
クローディアが考え込む。今の情報は貴重である。
ここまでこじれる前に、あっさりと妖精がいたずらをやめて話が終わっていたら、後日何らかの障害が発生して、やり直しになっていた可能性がある。
そして活動場所が遠ざかっていた可能性も。
しかし、不幸中の幸いで、妖精が示した課題をクリアすれば、それも解決する。
ならばやるしかない。
「わかりました。お引き受けします」
<うん! じゃあ、できたら声かけてね!>
妖精は満面の笑みを浮かべると、鏡へと消えた。
<あ~! 今日は楽しかったなあ! あは! あはは!!>
くっ最後まで、いらっとさせる妖精だ。
それでも前進した。
しかし解決するにはまだまだ先のようである。
妖精は扱いが難しいと実感したクローディアでした(笑)




