第31話 明日に向かって、祝杯ですわ!!
「クローディア、お待たせ」
そう言いながら、馬車に入って来たのはエルネストである。
「いいえ、わたくしも今来たところですわ」
生徒会室を出た後、教室に帰るとサーラとカレンがいた。
早速2人に、部員の最後の一人が見つかり、部の新設が正式に認められたと報告した。
2人は文字通り飛び上がって喜んでくれ、その流れで2人と祝賀会を兼ねて、いつもの2のカフェでお茶していたクローディアである。
エルネストとは今日はこれからグレームズの屋敷に行って、ララとゾルジを交えて4人で部の発足を祝う事になっている。
5人目の部員が見つかると信じて、朝からそう約束していたのである。
うん。信じる者は救われる。
お祝いと言っても、クローディアお手製のお菓子とお茶で、であるが。
ご馳走はなくてもいいのである。要は気持ちだ。
サーラとカレンも誘ったのであるが、連日の帰宅時間が遅かった為、今日は早めに帰ると断られた。でも先程まで、カフェで2人とはお祝いできたからよいのだ。
「はあ。やっと活動開始できますわね」
何のかんの言って、会長から出された課題から、もうすでに部の活動が始まっているような気がするが、区切りである。部が正式に認めらての活動は来週からだ。
どのように活動するか。みんなで決めていくのが楽しみである。
ほくほくうきうきしていたクローディアであるが、いきなり隣に座っていたエルネストがぎゅっと手を握ってきた。
「エルネスト様?」
いつも思うが、この座り方おかしいだろう。向かいに座るのが普通である。なぜ向かいに護衛が一人で座っているのだ。
しかし横を見たエルネストの不機嫌な顔に、その突っ込みはできない。
まずは彼の不機嫌の原因を聞くべきだろう。
「どうかしましたか?」
何か心配な事でもあったのだろうか?
「‥‥クローディアの良さは僕だけ知っていればいいのに」
「は?」
「ユーリ殿下がクローディアに興味を持った」
「はあ?! まさか! しがない男爵家の娘にそんな事ある筈ないですわ」
どこにそんな要素があった。手を煩わせただけで、こんな平凡な男爵家の娘に興味を覚える訳がないではないか。
「僕は聴いた。ユーリ殿下の口からクローディアに興味があるって」
「聞き間違いでは? きっと妖精の事に興味がおありになるのではないでしょうか? そうに決まってます」
クローディアの唯一の取柄といえば、妖精や精霊が視える目であるが、それで興味を引きたくないから、上手く隠した。なので興味を持たれる要素が一つもない。
「殿下が興味深そうにしていたのは、ゾルジが作ったアイテムですよ。第3音楽室でわたくし、見てましたもの。エルネスト様にモノクルを返す時の王子の表情。返したくないってお顔をしておりましたわ」
そうだ。今日以降、モノクルについて侯爵家に王家から問い合わせがないとよいが。
まあ、問い合わせがきても、それに対応できるよう、段取りはついている。
「そんな事より、念願の部の発足ができますのよ! 喜んでくださいませ!」
「そんな事より!? 僕には大切なことなんだけど?!」
エルネストがクローディアに向き直って睨んでくる。
睨んでも負けない! 今日は超ご機嫌な自分である! エルネストのちょっとの不機嫌なんて吹き飛ばしてくれるわ!
「何をごちゃごちゃおっしゃってるのです? 今日はこれか祝杯をあげるのですわ! ほらほら、そんな辛気臭い顔しないで!」
「僕はもともとこういう顔だよ」
あ、これはまずい。
浮かれすぎてまともにエルネストの話を取り上げなかったのがいけなかった。
すっかり拗ねてそっぽを向いてしまった。
これはいけない。
折角のお祝いパーティーが楽しくなくなってしまう。
「申し訳ございません。決してエルネスト様の言葉を軽んじたのではございませんわ。つい。嬉しさが先に出てしまいまして。エルネスト様の心配、きっちりと心に留めておきますわ」
「本当に?」
「ええ! これ以上、ユーリ殿下にかかわりませんから、安心なさってくださいませ!」
王家になんて誰が好き好んで近づきたいものか。こちらはしがない下位貴族の男爵家の娘だ。へたに近づいて、お家がぺしゃんこにされる可能性を増やすなんて事、自らする筈がない。
「でも殿下、すごい恰好いいよね? クローディアは興味持たなかったの?」
「もちません! 恐れ多いです!」
確かに流石王族と思うほど、整った顔立ちをしている。将来さぞや女性を虜にする顔立ちになるだろう。けれど、中身も立派に王族である。腹黒さが滲み出ている。絶対お近づきになりたくない|類いの人種である。
「お嫁さんになりたいとか思わなかった?」
「全く! 格好良さでいけば、エルネスト様で間に合っております!」
「クローディア!」
エルネストがぱあっと顔を輝かせた。
そう、イケメンはエルネストをはじめ、クローディアの周りに結構いるのだ。目の保養は十分である。
クローディア自身は中の中。天秤は上にも下にも傾かないくらいに平凡である。
エルネスト並みの美しさがあれば、人生大いに変わっただろうなとつい考えてしまう。
くっ! 羨ましくなんかないっ!
「クローディア! やっぱり僕の事思ってくれてるんだね!」
「はい?」
いけない。つい、世の不公平を考えていて、エルネストの言葉を聞き逃したかもしれない。
「嬉しいよ! 僕もクローディアが一番だからね!」
なんだかわからないが、エルネストの機嫌がよくなったようである。
これは、それにのるしかない。
「ふふふ。小さい時からのお付き合いですもの。エルネスト様を大切に思うのは当然ですわ」
「クローディア‥」
全開の笑顔を向けて来るエルネスト。
ふう。やれやれである。
その時ちょうど馬車が止まった。
どうやら、お家についたようである。
「さあ! ララとゾルジが待っておりますわ! 祝杯をあげましょう!」
明日から、勉強に、部活に、がんばりますわよ!!
これで第1章終了です。
第2章始まりまで、少しお時間いただきます。
忘れないで、続きをお待ちいただけると嬉しいです(*^^*)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
最終行修正しました(22/10/13)




