第13話 相談です! 3人寄れば文殊の知恵!?
<へえ~。妖精がいたんだぁ!>
クローディアは中庭にあるライトグリーンの椅子に座り、セットになっている丸いテーブルの上に座ってクッキーを食べるララとゾルジに話を進める。
ララは妖精がいると聞いてテンションが上がったのか、ピュっと飛び立つと上空で一度旋回する。そして続きが気になるのかすぐにテーブルに戻ってきた。
<それでそれで? どんな妖精だったの?>
「浅黒い肌に薄い灰色の髪がピンピンとはねてる姿は可愛かったわよ」
<姿はって、なんかひっかかる言い方ね~>
「そうなの。なんかすごく人間を嫌っているみたいで、ずっと人間の悪口を言っててね。びっくりしたわ。あそこまで人間を嫌っているのに、なぜ学院にいるのかしらって思ったくらいだもの」
<あ~。きっと黒妖精だからだと思うわ~>
「黒妖精?」
<そう。闇の神に属する妖精で、ちょっとひねくれてるの~。人間へのいたずらは主に黒妖精がするかな~>
なんと。クローデイアが適当につけた呼び名は殆ど当たっていたらしい。まあ、その妖精固有の名前ではないが。
「そうなのね。ちなみにララは?」
<私はまた違うんだけど~、どちらかというと白妖精かな~>
「今の話からすると、白妖精は人間を助けてくれる良い妖精なのかしら?」
<ん~? 黒妖精も別に人間に悪い事はしないわよ~。いたずらはするけどね~>
「ララがそう言うならそうかもしれないけど。さっき視て来た妖精は人間を馬鹿にしきっていたわよ。それに人間を怖がらせて喜んでいる感じもしたし」
<ん~。黒妖精はひねくれてるからね~。人間はそう感じちゃうかもねえ。でもそれでも学院にいるっていう事は、何か人間に気づいて欲しい事があるんだと思うわ~>
「気づいて欲しい事?」
エルネストも帰りの馬車でそのような事を言っていた。
<そう! 絶対そう~! じゃなきゃ、そんな空気の悪いところにずっといないわよう~。妖精は基本空気が澄んだところが好きなんだからぁ。あ~クローディア~、頭使ったから甘いものがもっと欲しい~! クッキーもう一枚ちょうだい!>
ララは小さな手をクローディアに差し出す。
「はい、どうぞ」
クローディアはクッキーを差し出しながら、首を捻る。
「気づいて欲しい事‥‥、なんなのかしら?」
それまで黙々とクッキーを食べていたゾルジが口を開いた。
<クローディアよ。その音楽室で妖精が言った言葉をできるだけ正確に、全部教えてくれ>
「ええ?! 無理だよ! 全部なんて覚えてない!」
エルネストなら正確に再現できるかもしれないが。暗記についてはクローディアは努力あるのみなのだ。誰かエルネストを呼んで! エルネストプリーズ!
<できるだけでよい。教えてくれ>
「うっ。わかった。がんばってみる」
クローディアは先程の音楽室での事を意識して思い出してみる。
「確か、性懲りもなく来たとか、役立たずとか、全部人間のせいとか。なぜ自分の姿がわからないのか、なぜ声が聞こえないのか怒っていたような」
<うむ。そうか。そ奴の言葉の裏を返せば、こうった状況になったのは人間のせいで、自分に気づいて欲しい、声を聴いて欲しい、そして少し飛躍になるが状況を改善して欲しいと言ってるようにも思えるな>
「ええっ!! そんな風には全然聞こえなかったけどなあ」
<それが一向に気づいてくれないし~、そもそも人間が自分の姿を認識できない事に失望しまっくてるから~、悪口連発するのかもよ~>
「ぐっ!! 確かに一理あるかも」
でも、ここまでわかるのはきっと同じ妖精だからではないだろうか。ゾルジは少し違うけど。
負け惜しみなどでは決してない。あ、エルネストは気づいていたか。
<それに、その妖精が自分が消耗するにも関わらず、そこにずっといる理由を考えてみよ>
「妖精がそこにいる理由?」
<妖精は基本気ままだ。理由もなく一つのところに留まる事はない。その場所がよっぽど好ましい場所か。好きな者がそこにいるか。どうしても気になるものがそこにあるかだ>
「妖精にとって学院は決して好ましいところじゃないわね、好きな者って、あの妖精は人間は全員嫌ってそうだし、妖精は彼女一人だけだったし、となると」
<どうしても気になるものがそこにあるから~、動けないんだわ~>
「気になるもの? あっ! それって目が動く肖像画!?」
<うむ。おそらくそうだろう。クローディアよ。目が動く以外に他に気づいた事はなかったか?>
「そうね。目はきょろきょろと忙しく動くのでなく、ゆったり規則正しく左右に動いていた感じで。後は別に」
<うむ。それだけだとわからぬな>
<私がついて行って~、その妖精と直接話してみるのはどう~? 同じ妖精同士なら、色々話してくれるかもよ~>
「そうね!」
それはとてもいい考えに思えた。しかしそこでクローディアは学院に充満する空気の悪さを思い出した。
「残念だけど、ララは学院に行かない方がいいわ。話している以上に学院内の空気が悪いから。きっとララ、すぐ具合が悪くなっちゃうと思う」
<え~、そんなに? でも、音楽室の妖精は大丈夫なんでしょ~? なに、それはララがその妖精より弱いって事~?>
ララはぷーっと頬を膨らませる。
「違うわ! 違うけど、ララの事が心配なの」
クローディアは慌てて弁解する。ララは王都に来た当初、王都の空気にあてられ、元気がなくなってしまった時期がある。
今はだいぶ慣れて来ているが、それでも長期間はこの庭から出られない。
この庭は神として祀られていたゾルジがいるからかとても空気が澄んでいるのだ。
<これ、あまりクローディアを困られるな。そなたが弱いわけではないだろう。要は気質の問題だ。そなたは自然から生まれた者で、学院にいる妖精は黒妖精だ。陰の気にも多少耐性はあるのだろう>
「そ、そうよ。ララ。ララはいっぱい私を助けてくれてるわ。ララは強いわ」
<へへ。そう? そうよねえ>
ララは機嫌を直してくれたようだ。
<ならば、我が行こう。我には8つの目があるし、クローディアよりも絵をよく視る事ができるだろう>
「ゾルジ!? 大丈夫なの?」
ゾルジとて、あの学院の空気は堪えるのではないだろうか。
<大丈夫じゃ。ただし、学院に行く前に、クローディアのクッキーを沢山食べ、気力をチャージしてから望みたい>
「もちろんよ! 助かるわ」
それくらいならお安い御用である。
<ぶー! ララはお留守番かあ。なんかつまんない~>
「ごめんね」
<ううん。ララ、役にたてなくてごめんね~>
しゅんとララが羽をしぼめる。
「そんな! ララが傍にいてくれるだけで、私はいつも元気になれるわ」
<本当?>
「本当よ」
<えへへ。クローディア大好き~>
「私もよ」
ララとちょこんと指と指を合わせ、微笑み合う。
<終わったかの。ほら、執事がおぬしを呼びにきたようじゃぞ>
「本当。叔父様たちが帰って来たのね。では二人ともまた後でね」
<ああ>
<はーい!>
クローディアはリフティンに頷きつつ、席を立つ。
2人と話していて、更に頭の整理がされた。
そして、解決への手段が細いながらも出来た。
リミットは1週間、頑張らなければと決意を新たにした。
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