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第12話 小さな可愛いクローディアの友人 癒し~!

短いです。

「おかえりなさいませ。お嬢様」

 クローディアを迎えたのは、まだ年若い執事である。

 茶色い髪を後ろになでつけ、眼鏡をかけた姿はまさに執事である。

 これが数年前までは、叔父の商会にいた商会員だとは思わないだろう。

 まあ、叔父の商会も、貴族を相手にして商売していたが、執事としての所作を身に着けるには大変だったに違いない。

 それを感じさせないのが、このリフティンである。

「ただいま」

 それにしても感慨深い。

 クローディアが初めて王都に来た時は、グレームズ男爵家所有の屋敷(タウンハウス)などなく、パースフィールド侯爵家に泊まらせてもらったのだ。それが今では貴族街に屋敷を持つことができたのだ。それも庭付きの屋敷である。

 とはいっても、グレームズ男爵家単独所有ではなく、ニコル叔父との共有の財産ではあるのだけれど。

 それでも平民すれすれの貧乏男爵家が王都に屋敷(タウンハウス)を持てたのは、すごい事なのである。その貧乏男爵家がどうして屋敷(タウンハウス)を持てるようになったのか。それはクローディアのお陰である。クローディアが自分に必要だと思って作った毛糸の帽子、それにつけた飾りの毛糸のお花が思いのほか、王都の女性にうけたのである。更に、混合の糸のアイディアもこれまた繊維業界に旋風を巻き起こし、ニコル叔父の商会にすごい富をもたらしたらしいのである。

 らしいとあやふやなのは、クローディアはアイデアを出すだけで、その後の開発や販売などはすべてニコル叔父の商会に丸投げだからである。ニコル叔父はその利益を独占する事なく、クローディアにも還元してくれたのである。そのおかげで、小さいながらも屋敷(タウンハウス)を買う事ができたのである。

 ニコラ叔父には感謝である。

 ありがたや、ありがたや。

 屋敷(タウンハウス)は基本ニコル叔父家族が住み、社交シーズンにはクローディアの家族である男爵一家も利用する。グレームズ男爵家は基本、領地経営で手一杯なので、王都に来るのは社交シーズンの、それもほんの短期間しかない。それでも拠点があるのとないのとでは貴族にとってはかなり違うらしい。その辺のところはクローディアにはわからないが、自分にとっては大変ありがたい。と言うのも、今年から3年間、学院に通う為の家が王都にできたからだ。これで学院の寮に入らないで済む。学院のあの空気の悪さではララやゾルジは学院内にある寮には連れていけなかっただろう。それに余計な出費が抑えられる。本当に屋敷(タウンハウス)が買えてよかった。

 そして現在ここに住んでいるのはニコル叔父家族とクローディアである。

 社交シーズンではない為、クローディアの家族はいない。

 父は多少お金持ちになったとしても、所詮は貧乏男爵。地道が一番とおごる事なく、自領で今も畑を耕している。

 我が親ながら、小心いや、謙虚な心構えである。

「叔父さまたちは、帰っていて?」

「いえ、まだでございます」

「そう。では帰られたら、呼びに来てちょうだい。私は中庭にいるから」

「かしこまりました」

 クローディアは中庭へと向かいつつ、(のうりょく)も解放する。

 この屋敷は小さいながらも、中庭がある。

 そこは、草木が生い茂り、光が満ち溢れている。日の当たる時間は短いはずなのに、まるで温室にいるような錯覚をさせるほどに年中暖かい。それはそこに2人が住んでいるからかもしれない。

 中庭へ足を踏みいれると、すぐに元気な声がクローディアを迎えた。

<おかえりなさーい!遅かったわね~>

 きらきら光る羽をひらめかせ、クローディアの目の前にやって来たのは、金の髪に若葉色の瞳を持つ、妖精ララである。

「ただいま、ララ。何も問題はなかったかしら?」

<ないない。あるわけないでしょ~。私とゾルジがいるんだからあ>

「ふふ。そうね。そのゾルジは?」

 その声に応えるように、一匹の紫の蜘蛛が近くの木の上から糸をすーっとたらし、クローディアの肩にちょこりと乗った。大きさは大人の手の平2つ分くらいある。

<帰ったか。して、音楽室の怪はどうだったのだ?>

 8つある目をこちらに向けて尋ねる姿は、可愛らしい。

 この可愛いには賛否両論あるが、蜘蛛が嫌いではないクローディアには可愛く見える。

 だいたい蜘蛛は害虫を食べてくれる益虫なのだ。嫌いになれるわけがない。

<もう~。ゾルジはせっかちなんだから>

<すまん。つい気になってしまってな>

 このゾルジは怪我して動けなくなっているところをクローディアが助けたのをきっかけにずっとそばにいてくれている。

「ふふ。気にしないで。ゾルジがそれだけ気にかけてくれているとわかって、とても嬉しいわ。そうだ。2人ともよければ、クッキーがあるわよ。いかが?」

<わーい! クローディアのクッキー! もちろん食べるわ!>

<我もいただこう>

「はい。召し上がれ」

 鞄から取り出し、2人に一枚ずつ渡すと、早速美味しそうに食べ出した。

 クローディアが作るクッキーはなぜだかわからないが、妖精や精霊にとても喜ばれる。

 彼らいわく、食べると元気になるそうだ。

 ただ残念な事に人間にはその効果はない。

「食べながらでいいから、聞いてくれる? さっきゾルジが聞いてくれた音楽室の怪の事なんだけど」

 そうしてクローディアは今日有った音楽室の出来事を話し出した。

なるべくこのお話だけでわかるように書くつもりですが、ん、わからないなと思われた方は、菓子クロシリーズの前作、前々作をお読み頂ければ、嬉しいです(*^^*)

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