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8話 提案と再会

 やがてなされた先生の提案は、衝撃的だった。


「私から君にある任務を依頼したい。もしそれを達成できたなら――特例として君に関しては昇格試験の所属クラン制限を無効にしよう」

「はっ!? 出来るんですかそんなこと」

「実は割と偉いのだよ、私」


 ドヤッと、得意げに無い胸を反らす。


 そうは言われてもなぁ……。事が事だけに、真剣に悩んでしまう。

 部屋を見渡してみる。まごうことなきゴミ部屋だ。

 先生を見てみる。どう見ても幼女だ。威厳とは程遠い。

 この人に、政治力……?


「うーん……」

「少年、何か失礼なことを考えているね?」

「いや……先生って威厳ねえなあと思っただけで」

「よし、話は終わりだ」

「すいませんすいません! それで、任務の内容は?」

「聞くということは、乗り気と捉えて良いのかね?」

「受けるかどうかは内容次第ですがね」

「賢明だ。実はな、この学園にまた一人、君と同じ<ハグレモノ>が生まれてしまったのだよ」


 そんなバカな。学園中からハブられるなんてそう簡単に出来るものじゃないぞ……?


「……俺が言うのも難ですが、相当なことをやらかさなきゃ普通はどこかしらのクランには入れるんじゃないですか」

「ははは……そのなんだ、彼女は壮大な目標を掲げていてね。それが災いし、生徒たちに煙たがれるようになり今の状況に至っているというわけだ。教師としては、このまま放置とはいかんだろう?」

「それは、まぁ」


「そこで君に頼みたいのは、彼女が掲げる目標の実現だ」

「え、ハグレモノじゃなくなるようにするのが依頼じゃないんですか」

「別に私はそこにこだわってはいないよ。充実した学園生活を送ってくれさえすればそれでいいんだ」

「なるほど。所属クラン制限を解くとまで先生が言うってことは、かなり大変ってことなんですよね?」

「そうだ、と言ったら君は諦めるのか?」

「……まだ全容はつかめていませんが、やる前から可能性を捨てるつもりはありません」


 先生の試すような言いぶりに、俺はニヤリと笑って返す。

 こんな機会はめったに無い。それに、せっかく先生が与えてくれた機会だ。

 ――石にかじりついてでも、物にして見せる。


「良い返事だ。っと、ちょうど頃合いのようだね。実は彼女をここに呼び出してある。詳しい話は本人から聞くと良い……入りたまえ」


 先生が言うと、瑞々しい活気に満ちた声が扉の外から飛んできた。


「失礼しまーす!!」


 あれ? なんか聞き覚えが……。

 勢いよく開け放たれた扉の奥から現れたのは――。

 ――さっき出会ったばかりの、あの銀髪演説女であった。


「先生、ごめんなさい無理です」

「秒でお断りされた!?」

「可能性はどうしたね、君」


 流石に先生は呆れ顔だ。でも、これは無理だろ……。

 絶望にうちひしがれていると、銀髪女がこちらに気づく。


「あれ? 君はさっきの……」

「なんだ、ルーシャ君とは知り合いだったのかね」

「名前は今知りましたが、彼女の主義主張は知っています。よって、無理です」

「なるほど……ルーシャ君すまない。手伝いの件はなかったことにできないだろうか」

「二人共諦め早すぎない!? 先生、私この人とちゃんと話したことないです。いきなりお断りって言われても納得できません!」

「……分かった。アイン少年、知っているのと理解しているのは異なる。折角の機会だ。判断をするのは、彼女と話をしてからでも遅くはない。そうは思わないか」

「……まぁ、話すだけなら」


 俺がそう返すと、野生動物のように警戒体制をとる銀髪女が胸を撫で下ろした。


「上出来だ。では、私は少し席を外すとしよう。この場所は貸しておいてやるから、あとは若い者同士でゆっくり話すと良い」


 大人の余裕とでも言いたげに優雅に微笑むと、ひらりと手を振ってミラ先生は去っていった。

 パタリと、扉が閉まる。

 段々と足音が遠ざかっていくのをしっかりと聞き届け、俺は切り出した。


「……汚えし、場所変えるか」

「賛成!」

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