6話 ミラ先生=教師≒幼女
先生の執務室に着く。ノックを3回。
「入りたまえ」
「失礼します……ってうおっ!?」
執務室の中は1メトル先も見えないような暗闇に包まれていた。俺は、地面に散乱している本(多分)でつまづきバランスを崩した。
なんとか体制を整えようと踏ん張ろうとしたが、その先にも何かがあったらしく結局、そのまま前へと転倒。
「いってぇ……ん?」
人の気配を感じ、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、見事な肌色成分が目の前に鎮座していた。
俺の半分ほどの背丈しかない未成熟な子供の身体は、何故か服をまとっていない。
一見すると女性らしさの乏しい薄く小さな身体、なのだが。
それとは裏腹に、肌は雪のような白さで、その中に僅かだが朱がさしていて女性の色を感じさせる。
魔導計算機が発する青白い光が辺りを照らす。
長い髪の隙間からチラリと見えるうなじが闇の中に浮かび、妖艶さを醸し出す。
……え? 裸じゃん。この人裸じゃん……!
背徳的な光景に一瞬見入っていると、その肌の持ち主がジト目で声をかけてきた。
「おや、君は幼女の身体に関心があるのかね?」
「え? あ、いや……」
「よいよい。ならば、時間通り来れた褒美として膝枕くらいはしてやろうじゃないか」
挑発するような表情を浮かべながら、ポンと膝を叩く。
俺は反射的に目を背けた。
クソ、体型幼女のくせに動揺が隠せねえ……悔しい。
「……生徒を呼ぶなら服くらい着たらどうですか、ミラ先生。通報しますよ?」
「クク、それは失礼」
幼女が指を鳴らすと、何もない空中から洒落たローブが舞い降りてきた。
今のは転移の魔術ではない。この瞬間に、彼女が創造したのだ。
ミラ・ローディアス――彼女のクラス【創造者】によって行われた、神の奇跡にほど近い無から有を生みだす離れ技。
先生によれば自身の想像した物を、魔力を糧にし世界に具現化させる能力だそうだ。生産系のクラスは数あれど、彼女に匹敵するほどの万能性を持ったクラスはそうあるもんじゃない。
彼女は洗練された所作で優雅にローブを身にまとった。
出自を聞いたことはないのだが、先生の仕草はどこか品がある。もしかしたら、どこかやんごとなき所に出自を持っているのかもしれない。
先生がもう一度指を鳴らす。
すると、今度はカーテンがひとりでに動き出し、外の日差しが部屋に勢いよく入り込む。
陽光に照らされ、部屋の全体像が段々と浮かび上がってきた。
そこはミラ先生の上品さが現れたかのような部屋で――
「くっそ汚えなおい」
――あってほしかった。
「教師の部屋に向かって暴言をはくのはやめたまえ」
部屋にはたくさんの紙や本、それから作りかけの魔道具などが所狭しと散乱していて足の踏み場がない。生ゴミはなさそうなことだけが唯一の救いか。
「前に、自動で掃除してくれる魔道具を作ったってドヤ顔で自慢してきましたよね? なんすかこの惨状」
「ああ、ミラシリーズ5269号か。あれには重大な欠点があってね……床に物が落ちているとうまく起動してくれないのだよ。全く、我ながら使えないことこの上ない」
「5269号もそう思ってるでしょうね、先生のこと」
「さて、お茶にしようか。何が飲みたい?」
ガン無視ですか。出来ればこの部屋の食べ物類は口にしたくない。
「……この部屋の外から持ってきたものなら何でも」
「ふむ、確か最近もらった茶葉があったな。どれどれガサゴソ、と」
「聞けよ」




