2話 学園都市は眠らない~帰り道は舞台解説とともに~
ようやく帰ってこれた。
慣れ親しんだ学園都市の入口を見て俺はため息をつく。
ユーディニア王国特別学園行政自治区――通称、学園特区。
その中心がこの街、学園都市だ。
王国外の人間は<オルデン魔法学園都市>と呼ぶが、王国民はみな、学園都市と略してしまう。
街の目抜き通りには金属で作られたお洒落で丈夫な建造物が所狭しと立ち並ぶが、贅沢に土地を使い都市が整備されたことから窮屈さは感じない。
目抜き通りの道幅だけみれば、むしろだだっ広い。
しかし、この場所は年中、人で溢れているため結局は狭く感じる。
この街が活気にあふれているのはもちろん、都市の面積の約5分の1を占めるランドマーク的存在――オルデン魔法学園の影響だ。
この学園を卒業さえしてしまえば生涯、王国で食うには困らないと言われるその評判を聞いて、毎年、国中から優秀な生徒たちが集まってくる。
その中には、有力な商人や貴族の師弟も含まれる。
人が集まれば経済が回る。
その自然な動きを利用し世の中を動かす存在が学園や王国の上の方にいるらしく、街は加速度的に発展を続けてきた。今では、『この場所こそが世界の中心だ』などと主張する声が出てくるほどの一大都市になりつつあるとか。
ただまぁ一住人の感想としては、この街はたまに観光で来るなら面白いかもしれないが、住むとなると正直疲れる。
誰もが進め、進め、と一日中気を張り続けているようなヒリヒリとした雰囲気が街のあちらこちらから感じられる。
眠らない街というのは休まらないのだ。
(なんでこんな街に来ることにしちゃったのかねえ)
都市の中心――<オルデン魔法学園>へと続く長い道を歩きながら、心内で愚痴る。
(そりゃあれだ、例の<学園任務>ってやつを一瞬でも面白いかもと思っちまったからに決まってるだろ)
頼んでもいないのに、脳内の冷静な自分が答えてくれた。
<学園任務>。
オルデン魔法学園は、王国の住民や冒険者ギルドから、猫探しから危険モンスターの討伐まで、ジャンルフリーで依頼を募集している。それらを学園で管理し、生徒に任務として発注するのだ。
問、そんなもんを生徒がわざわざやりたがるのか?
答、めちゃくちゃやる。むしろ取り合いだ。
そのからくりは、オルデンの特殊な評価制度が影響している。
実は、オルデンは生徒の評価手法が他の学園と大きく異なる。
生徒たちは皆、F~Sまでの<グレード>によってのみ評価されるのだ。
グレードを上げる手法は一つしかない。昇格試験の突破、それだけだ。
ただ、昇格試験を受けるには一定値以上の<グレードポイント>を所有している必要がある。
ポイントを稼ぐ方法はいくつかある。例えば、他の学園と同じように試験で好成績を収めるなど。しかし、それでは到底まかないきれない。
そこで出てくるのが学園任務だ。
ポイント稼ぎは、学園任務を達成していくのが圧倒的に効率が良い。
グレードは卒業後の就職先や在学中の待遇に関わってくる。例えば、さっきの空中列車なんかも一部の学生しか使えない。
結果、生徒たちは任務を取り合ってグレード上げに勤しむというわけだ。
この一連の仕組みをそのまま<グレード制度>という。
もう一つ、生徒たちがグレードを効率的に上げるために作られた制度があるんだが、そっちの話は今はいいだろう。
オルデン魔法学園の巨大な校門が見えてきた。




