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プロローグ
国鉄技術研究所
この日、機関車技師たちはC52のデータを持ち寄り、議論を交わしていた。そのなかには、あの有名な島安次郎と島秀雄、そして後に島秀雄と対局をなす機関車設計技師、堺勇次郎がいた。
「やはり3シリンダーは我が国では難しいのではないか!?」
「いや、昨今の旅客輸送の需要を見れば必要なのは一目瞭然だ!」
「しかし技術がないではないか!C52がそれを物語っているでしょう!」
進展の無い議論が続く。それに終止符を打ったのはあの天才だった。
「3シリンダー機関車は必要だ。そしてそれを作るのが我々の仕事だ。諦めている時間はない。」
島安次郎の声だった。