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第七話 地獄の神殿

 この世界に来てから、俺は革命団の隠れ家とその周辺の森しか見ていなかった。

 ただ、隠れ家の周りで仲間たちと一緒に訓練を積んできた。


 だから、衝撃だった。


 この森の中に、時代を感じさせるような雰囲気を漂わせる神殿があったことが……。





 今から神殿に行くよ。

 そう言ったウルガヌスに、俺は質問する。


「こんな俺たち以外誰もいない森の中に、神殿なんてあるんですか?」

「あるとも。それに強力なアンデッドモンスターがたくさんいる。いい修行場になる」


 俺たちはその言葉を聞き、ウルガヌスについていった。

 どうやら、ウルガヌスが言う次のステップとやらは、そこで教えてくれるようだ。

 俺が意気込んでいると、後ろから女子たちの声が聞こえてきた。


「リセぇ、神殿なんて、なんだか楽しみね!」

「ふふ、カディアの可愛さに、アンデッドモンスターも浄化しちゃうかも」

「またまたぁ。リセのかっこよさに浄化するかもよぉ?」


 などと、よくわからないやりとりをしている。

 俺とウルガヌスは、それを聞きながら歩いていった。


 ちなみに、セブラー博士は留守番である。

 理由はたいして強くもないのに、やたらうるさいため魔物を呼び寄せやすいからである。


「ウルガヌス、そういえば俺以外の三人のホムンクルスはどういう経緯をたどって、ホムンクルスになったんですか?」


 俺は、男だけ何も会話しないのもどうかと思い、ウルガヌスに質問を投げかけた。


「……そういうのはね、やはり本人の口から聞くべきだと思うよ」


 ウルガヌスは神妙な態度で答える。


 なるほど。そこは、プライバシーの権利というやつか。

 ……って、なかなか会話がつながらないな。

 ここはいっちょ、奇声でも上げてみるか。


 などと、馬鹿なことを考えていると。


「着いたよ。ここが、神殿だ」


 と、ウルガヌス。

 その言葉を聞き、見上げてみると。


 まず、灰色に薄汚れた柱や、謎の文字が描かれた壁が目に入った。

 全体的に見るとかなり時代を感じさせる古い建造物、といった感じだが、そこはかとなく神秘的な雰囲気を感じる。


「わぁぁ、すごーい!」

「なんだか神秘的ね」


 後ろを歩いていた女子二人も感嘆の声を上げる。


 たしかにこれは、俺も神殿と呼ぶに相応しいと思う。

 それほど、生で見たこの建造物はすごかった。


「さて、早速中に入るよ」


 と言ったウルガヌスに続き、俺たちは神殿に入っていった。

 のだが……。





「どうしてこうなった」


 神殿の中に入ってしばらく。

 ふと、何かの気配を感じて周りを見てみれば。


 俺たちは、いつのまにか大量のゾンビに囲まれていた。


「いやぁぁぁぁぁ! キモいぃぃぃ! 臭いぃぃぃ! 帰りたいのぉぉぉぉ!」


 と叫びながら地団駄を踏むカディア。


「そんなに面と向かって悪口を言ったら、ゾンビさんがかわいそうだろ。ゾンビさんだって、生きてるんだぜ」

「生きてないから、ゾンビなんでしょ」


 俺の言葉にすかさず、リセが突っ込む。

 そんな俺たちに、ウルガヌスは言う。


「このゾンビに包囲されるという状況……ちょうどいい。チャンスじゃないか」

「え?」

「ナイト、今から次のステップに入る訓練を始める。まずはアキカンを構えるんだ」

「了解です」


 俺は、すぐに手に持っていた空き缶をゾンビ軍団に向けた。

 幸いゾンビ軍団は、足が遅いためまだ時間的な余裕はある。


「まずは、エレメントについて話そう。この世界の魔法には、四つのエレメントと呼ばれるものがある。火、風、土、水の四つだね」


 なるほど。要は属性のようなものか。


「そして、人にはそれぞれエレメントの適正がある。適正のないエレメントの魔法でも使えるが、威力は低くなる。それに対して、適正のあるエレメントの魔法を使った場合、威力はとてつもなく高くなる。

 カディアがそのいい例だよ」


 カディア、お手本を見せてあげなさい。と、ウルガヌスが言うと。

 カディアは元気よく返事をし、両手の人差し指をゾンビ軍団に向ける。


「これが、あたしの火エレメントよ! フレアー!」


 爆音とともに、真紅の炎が前方のゾンビ軍団を覆う。

 炎に包まれたゾンビたちは跡形もなく消えた。


「さて、次はナイトの番だ。この魔物に、自分に適したエレメントの魔法を放ってごらん」

「でも、俺に適したエレメントが分からないんですが……」

「魂に念じてみるのだ。魂と直接つながる魔法が使えたのだから、必ずできるはずさ」

「……は、はい」


 心の中では、「そんなのできるかぁ!」と叫んでいるが、後ろから迫ってくるゾンビ軍団との距離があと僅かなので、とりあえずやってみることにする。


(魂さん、魂さん、俺の適正エレメントを教えてくれー!)


 と、とりあえず心の中で叫んでみる。


 するとーー。


『お前の適正エレメントは、俺と同じ暗黒エレメントだ』

「は?」


 い、今なんか聞こえたんですけど……。

 しかもこの声って、どこかで聞いたことあるような……。


「ナイト、時間がないよ。早くしたまえ」


 ウルガヌスが催促してきた。

 くそっ。こうなったら、一か八かだ。


 俺は空き缶を後方のゾンビ軍団にしっかりと向ける。

 そして俺は無意識の内に、その技名を口にした。


「ダークサイダー」


 空き缶の飲み口から、暗黒の光線が発射される。

 その光線は、ゾンビ軍団に当たると一気に弾けた。


 暗黒の中で、ゾンビたちは跡形もなく消えた。


 え……。

 なんだこの力は……。

 あれは、まるで暗黒の……。

 しかもあの一撃を撃った後の脱力感が半端ない。


 俺は疲労感に耐えきれず、その場に膝をついた。


「えぇ、ナイトぉ、今のって……」

「四つの内の、どのエレメントでもないわね」


 カディアとリセが、不審な目で見てくる。


 違うんだ。

 俺も、よく分かってないんだ。

 だから、そんな目で見ないでくれ……。


「……ふぅむ。まだ力を制御できずに、魔力を半分も消費してしまったか」

「う、ウルガヌス? あのエレメントはなんですか?」

「ああ、今のは暗黒エレメントだね」

「何か知ってるんですか?」

「ああ。大昔、かの有名な暗黒神が扱ったと言われる伝説的なエレメントだ」


 暗黒神。

 前世で俺を殺した人物。

 いや、神か。


「暗黒エレメントは他のエレメントとは違い、神のエレメントだからね。

 いくら魔法の理を本能的に理解することができるホムンクルスでも、いきなりコントロールすることはできなかったか」


 ウルガヌスは顎に手を当てながら、解説していく。


「だが、それよりも気になることがある」

「なんですか?」

「暗黒エレメントの使い手は彼とその眷属しかいないが、暗黒神は今は姿を隠しており、眷属もある二人を除いて、他にはいないと聞いている」

「じゃ、じゃあーー」

「ああ、君は暗黒神の新たな眷属に選ばれた。その理由は知らないがね。なにか心当たりはあるかい?」

「それは……」


 俺が答えかけたその瞬間ーー。


「んぉ? なんだ、貴様らは?」


 神殿の奥の方から、声が聞こえてきた。


「この森の中には俺様以外、人はいないとおもってたんだがなぁ……」

「だ、誰よあんた!」


 カディアが叫ぶ。

 その叫びに、男は答える。


「俺様はマルクス。魔物を操れるエスプだ。お前らを殺すまでよろしくな」


 髭面の男マルクスはそう言い、両手を広げたのだった。





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