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第六話 一人で十体倒せばなんとかなる

 俺たちは、ゴブリン軍団を油断なく睨む。

 そんな俺たちにジリジリと詰め寄るゴブリンたち。


「ナイト、一人で十体やればいいのよね?」

「あ、ああ」


 リセさん、さっきの厨二発言は忘れてくだせぇ……。


「確かにこの囲まれてる状況だと、カディアの広範囲魔法でも、一発で全員落とすのは難しいわね」

「じゃあ、ナイトの作戦で行っちゃおっか!」

「ええ」


 そして、それぞれの敵へと向き直る。

 俺は、そんな仲間たちを一瞥して、右手に剣を、左手に空き缶を持つ。


「ギヒヒヒヒ!」


 三体のゴブリンが俺に向かって走ってくる。

 それを見て、俺は足元の地面に魔力を注ぎ込む。


 そうしている間にも、俺とゴブリンたちとの距離は縮んでいく。

 ついに三体のゴブリンが、俺の魔力が注がれた地面に着地したその瞬間。


「ギニャアアア!」


 俺の目の前で出現した巨大空き缶に、ふっとばされる三体のゴブリンが目に写った。

 三体のゴブリンは、わけもわからず地面に落ち、倒れる。


 よしよし、うまくいったな。

 突っ込んでくる敵に対して、トラップのような感じで空き缶を出現させたのだが、本当にうまくいった。

 やっぱり、俺の空き缶は攻撃にも防御にも使えるようだな。

 ゴミ能力とか言ってゴメンよ。


「行くぞ」


 俺は目の前の巨大空き缶を消し去り、残りのゴブリンに向かって走った。

 走りながら魔法を使う。

 左手の空き缶を四体のゴブリンに向け、魔力を込める。


「フレイムサイダー」


 空き缶の飲み口から放たれた炎の光線は、いとも容易く四体のゴブリンを消し去っていく。

 そして、素早く右を向く。


 残った二体のゴブリンが俺に剣を振り下ろそうとしていた。


「ーー!」


 俺は斜め前にジャンプしてかわす。

 それもただのジャンプではない。

 リセから教えてもらったあのジャンプだ。


 これを実戦で使えるようになれるとは……。

 これがホムンクルスの成長速度か。


 などと思いつつ目の前の木を足場に、二体のうち一体へと迫り切る。

 そして、すぐさまジャンプで逃げ、空中で回転しながら剣を投げる。

 剣は見事にゴブリンに命中し、突き刺さる。


 俺は手をはたきながら、地面へと着地した。


 ふぅ……これなら成り上がり系主人公どころか、無双系主人公にでもなれそうだな。キリッ!

 なんて思いながら、ゴブリンたちの死体を見る。


 そこで気づく。


 俺が巨大空き缶で倒したのが三体。

 魔法で倒したのが四体。

 剣で倒したのが二体。

 合計九体。


 ……でも、最初にいたのは十体……。


「あ」


 気づいた時には遅かった。


「ギャッハー!」


 上からゴブリンが剣を手に、降り掛かってきた。


 避けられない。

 ゴブリンがスローモーションで切りかかってくる。


 クソ、隠れてたのか。

 この世界のゴブリンに、そんな知能があったとは……。

 いや、それとも単に俺が見落としていただけか?


 俺は反射的に目を瞑る。


 が。


「ギャ!」


 俺は無傷だった。

 何故かと思い、目を薄っすらと開ける。

 そこには、青色に輝く髪をした美少女。

 リセが立っていた。


「ナイト」

「え?」

「貸し、一つね」


 リセはそう言って、下を指差す。

 そこには、先程のゴブリンと思われる死体が転がっていた。


「ナイト、身体能力だけに頼ってはダメよ。もっと周りをよく見て」

「ありがとう、リセ。この借りはいつか返すよ」

「倍返しで頼むわ」


 そんな俺たちの元に、カディアもやって来る。


「ナイト、リセ、早くここから離れないと」

「ええ、そうね。血の匂いを嗅ぎつけて、他の魔物が来ても嫌だしね」


 そして、俺たち三人は急いでこの場から去ることにした。

 その道中、俺は真の人気者、無双系主人公になるために、リセとカディアにアドバイスを求めることにした。


 走りながらも、俺は尋ねる。


「なぁ、俺がすぐに強くなれるにはどうしたらいい?」

「あら、さっきのことを気にしてるのかしら?」


 リセは笑って言う。


「大丈夫よ。ホムンクルスは再生力が高いから、腕を切られようが、また生えてくるから」

「そんな心配をしてるんじゃなくてだな……」


 別に死ぬことが怖いわけじゃない。

 ただ、無双系主人公になりたいだけだ。


「もっと活躍したいなぁ……って」

「じゃあぁあ、魔法を極めてみるってのはどう?」


 カディアが緑色の髪をなびかせながら言う。


「それは、どういう……」

「あのね、あたしたちホムンクルスは基本的に寿命以外は人間の上位互換なの」

「ふむふむ」

「それを一番はっきりと分からせてくれるのが、魔法の習得時間の圧倒的な短さなの」


 カディアは、可愛らしく人差し指を立てて説明してくれる。


「普通の人間は、初級魔法を習得するのに五年もかかるの」

「そんなに?」

「上級魔法なんて十年もかかっちゃうんだから」


 マジかよ。

 それはすげぇな。

 ウルガヌスから大雑把な説明は受けていたが、具体的な数字を聞くとちょっとビビる。


「なぁ、何が初級魔法で、何が上級魔法なんだ?」

「例えば、あたしのフレアーは上級魔法よ。でも、勘違いしちゃいけないのが一つあって」

「何?」

「フレアーの上位互換であるメガフレアーとギガフレアーも、これと同じ上級魔法なのよ」

「え、上位互換なのに、同じ級なのか……」

「まぁ、魔法を発動する仕組み自体はあまり変わらないからね。基本的にはただ消費する魔力量と威力が変わるだけよ」

 

  ほぇー。

  それはちょっと意外だな。

  基本的な仕組みが同じという理由で、フレアーとメガフレアーが同じ位の魔法だなんて。

  ゲーム好きの俺としては、なんかちょっと複雑だ。


「ナイトのフレイムサイダーとかは、魔力の消費量からして初級魔法だけど、威力自体は普通の人が撃つよりも高いから、後は極めて上級魔法を修得するだけね」

「なるほど……」


 それにしても、カディアがここまで真剣に答えてくれるとは思わなかったな。

 これはあれか。

 普段はふざけてるけど、まじめな時はまじめな人になるというやつか。

 うむ、ギャップ萌えギャップ萌え。


「あ、私からも付け加えるとするなら……」


 リセも真面目に話してくれる。


「ホムンクルスは初期戦闘力が高いから、より強くなるにはとにかく経験を積むのが一番いいわよ」

「経験か……」

「ええ、ホムンクルスは経験さえ積めば無敵よ。とにかく戦場に出て、実戦経験を積むことね」

「なるほど」


 そうか、実戦か……。


 と、俺が納得していると。


「ん! 目の前から何か来る!」

「え?」


 リセの合図で俺たちは止まり、様子を伺う。


 なんだ? また魔物か?

 と警戒しているとーー。


「ああ、君たち。こんなところにいたのか」

「ウルガヌス!?」

「どこに行ったのかと思って探しに来てみれば……三人揃って何をやってるのやら……」


 俺たちの前に現れたのは、仮面の男ウルガヌスだった。


「まぁいい。そんなことよりナイト。用意ができたから、次の修行場所へと行こうじゃないか」

「それって、どこですか?」

「ああ、それはこの大森林の中央にある神殿だよ」


 神殿。

 慣れない響きが俺の脳内を支配する。


 これから、凄いことが起きる。

 そんな予感を胸に、俺たちはウルガヌスについて行った。



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