第六話 アメ。そしてユキ。
辺りがだんだんと明るくなる。ーー気づけば辺り一面パステルカラー……なんともメルヘンちっくな部屋にいた。
「じゃじゃーん! ようこそー! 私の秘密基地へ!」
イズが元気よくそう言う。秘密基地……よく見て見ると、この部屋に扉や窓と言ったものは一つもない。ピンク色の家具や机の上に置かれた薄く光る結晶体、あとは棚に座ったかわいいうさぎの人形が二匹いることが印象的だ。
「そういえば、あと一つの短所って……?」
「あと一つはね、一定距離『神』と離れてしまうと、【魔法】が使えなくなるの」
「え、じゃあーー」
「そう、その瞬間【世界最弱冒険者】になっちゃうの」
何故その例えにしたのか分からないが……つまりだ、神との“直接契約”ってのは、一緒にいる時なら【無敵チート冒険者】、一定距離離れてしまうとその瞬間から【世界最弱冒険者】になってしまう……と言う事だろう。
「あの、それでね!ーー」
イズの話が止まる、そしてユウムの顔をじっと見つめて何かを決心した。
「私と“直接契約”をして欲しいの!」
◇
「え、なんで俺?」
「えっと、特に理由はないと言うか……いやっ、ないこともなくて! その……」
イズのこの反応は絶対何かを隠している。そうでなければこんなにも顔を赤くして話すことをためらうものかと思い、ユウムはこれまでの話をまとめる。
(状況を整理しよう。まず、俺はこの幼い女神によってこの世界に転移してきた。ーーそして、他の誰でもない日本最強ニートが転移させられたのには何か理由があるはずだ。ということは濃厚な展開としては……)
「イズ、俺は、この世界で最強の能力とかを持っているのか!?」
妄想を繰り広げて大興奮するユウム。それに対して「えっ」と言わんばかりの表情を見せるイズモ 。この空気、まさに『カオス』。
『そんな訳がないでしょ!』
『何言ってるの少年!』
どこからか柔らかい二つの声が聞こえる。だれかいるのかと思い辺りを見るが人影らしきものは一つもない。
『どこ見てるの?』
『下だよ下!』
言われるがまま、恐る恐る視線を下に向ける。その視線の先に“二匹のうさぎ人形”。
「始めましてユウム!」
「実験体のユウム!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
((人形が……喋ってる!))