天辺。そして魔法。l二
「俺、魔法とか一個も使えないんだ……実はさっき何度も実験したんだけど上手くいかなかったんだよな……」
少しの間が空く。
そして、それを聞いた彼女はクスクスと笑いだす。
「な、なんで笑うんだよ! 仕方ないだろ! 」
「クスッ、ご、ごめんなさい……っ少し面白くて……」
そう言うと、彼女は ふー、と呼吸を整え話を進める。
「この世界で魔術の類いは【魔法】と呼ばれるの。【魔法】を使うには、
*私たち神々の誰か一人と“直接契約”を交わす。
*妖精族を操る“魔導師”となる。
*神々の記した【魔導書】もしくは【魔導具】による“間接契約”を交わす。
このどれかを行う事によってのみ、発動することができるようになるの」
イズは人差し指を立てながらそう俺に説明してくる。
「その三つって何か変わってくるのか?」
「全然違う!
まず、【魔導書】や【魔導具】は神が最低限の知識を記した量産型【魔法】ーーLv.が上がるごとに能力値は上がるけど、せいぜい使えるのは神の二十%。
“魔導師”は妖精族の力を借りる事で神とほぼ同等の【魔法】を行使出来るの! だけど魔力の消耗が激しいから、もって五分って所かなー。
そして、神との“直接契約”は、その契約神の得意とする【魔法】を百%使用できるの! 魔力使用量もゼロに等しいから全く残魔力を気にせず戦闘に入れるって訳!」
「それだったら、神と契約するのが一番いいんじゃ……」
「ううん、、直接契約にもやっぱり短所があるの」
イズが悩ましそうな顔を見せるそしてまたユウムの方を向く。
「まず、神との“直接契約”は、一人の子としかできない。だから強大な【魔法】を無制限に使えるの。そして、もう一つ……」
「もう一つ?」
そう聞き返すとさっきの表情とは一変。イズは何故かわくわくしたような顔を見せた。
「これはある場所に行ってから説明するね!」
そう答える。そして右手を前に上げると目の前に二メートルほどの異次元空間が渦を巻くように突如出現した。
「な、なんだこれ……!」
間抜けな表情を披露するユウムを見て笑いながら、イズはぴょんぴょんとその空間の中に向かって行く。
「ユウムも早く来て!」
そう言うと、イズはその小さい手で呆然とするユウムの裾を掴み、その空間の中へと入って行くのだった。