第二十二話 階段。そして帰宅。
「そういえば、樹塔に入る前、結構人がいたのになんで俺たちしかいないんだ……?」
「この樹塔は五十〜六十階層と未階層領域以外、全て樹塔内に生成される異次元空間のようなものによって同じダンジョンがコピーされるです。だから今、沢山の人が一階層を攻略していますが、それは別次元で起きているということです」
スタスタと歩きながらサフィアが言う。要するに今この次元にいるのは俺たち三人だけという事だろう。しかし異次元空間ってまるでイズの【魔法】みたいだな……
「みてみて! この扉すごく大きいね!」
はしゃぎながら二階層へと繋がる扉を見て興奮するイズ。遠近でそれほど大きく見えなかったが、目の前に来ると結構な大きさである。ざっと平均身長の男性三人程と言ったところか。扉の奥には無数な色に光る綺麗な結晶でできた階段があった。
「す、すごいなこれ……」
思わず言葉に出てしまった。
「いつ見ても樹塔の螺旋階段は見入ってしまうです 」
無表情でそう言うサフィアであるが、声のトーン的に相当な関心があ流のだろう。
「ねーねー! 早く上に行こうよー!」
そう言ってイズは俺とサフィアの袖をぐいっと引っ張る。階段を踏むと段に波紋が広がっていく。
「ユウム様。着いたですよ」
あまりの美しさに気を取られながら階段を登っていたらいつのまにか二階層に来ていたようだ。
「あんまり一階層と見た目変わらないねー……」
広がっているのはゴテゴテした茶色い岩の壁と硬く固められた地面。正面にある三階層への扉とその上に埋められた【デスカウンター】あとはちらほらあるヒカリゴケと天井から射す結晶の光だけだ。
「十階層までは同じ形状の地形だと聞いたことがあるです。出てくる物の怪もさほど変わらず、能力値が高くなってくる……らしいです」
言葉としては曖昧なのだが、サフィアが言うと、そうなのかと納得してしまうからすごい。
「あっ! またさっきの物の怪だ!」
ダンジョンの周りから多数の犬型物の怪、ヘルハウンドが現れる。さっきのより能力値は上がっているようだが、イズとサフィアの連携が凄すぎて全く強さがわからない。むしろ可愛そうだ。
みるみるうちに【デスカウンター】が減少していきゼロになった。
そんなこんなで五階層まで攻略し、今日は街へと帰ることになった。果たして今日俺がいた意味があったのかと考えた少し考えてしまうな……





