回復
掲載日:2019/07/23
深い混沌の中にいた。
身体がずしりと重たくて、やたらと辛かった。
明るい、キラキラした夢をみた。どうすればあちら側へ行けるかな?って涙が流れた。
「こっちへ来るかい?」
優しい声がした。
「いきたい」
「いいよ。おいで」
ふうう。
深呼吸をする。
「おーい!生きてるぞ!」
誰かが叫んで何人も私を取り囲んだ。
「今すぐ病院につれていくから」
「うん」
微かに返事する。
身体を少し動かされただけで激痛が走った。
気絶していたから、ましだった。
運ばれて行き、手当てを受けて昏睡状態から這い上がる。
「姉ちゃん、あんた生き意地強いなぁ」
隣のベッドのおばちゃんが言った。
身体が少しづつ軽くて楽になっていくのがわかった。
「…死者180人を出した地下鉄事故で、原因となった金属疲労のレール撤去作業が続いています」
テレビの音を聞いて、あそこに自分がいたのだと知った。
やがて退院する日が来て、家族が迎えに来た。
「よく生還したね」
「うん」
あのとき、誰かがこっちへ呼んでくれたから助かったんだと、そう思った。




