第1話 邂逅は突然に
さわさわと。
吹き抜ける風と暖かい日差しに包まれ、俺、シオン=アルヴァレズは何度目かわからない大きな欠伸を零した。
ここは街から少し離れたところにある小高い丘の上。ここで昼寝をするのが俺の日課になっていた。
今日はここ数ヶ月で最高の気候だ。気温は少し低めだが快晴で日差しが暖かく、風は爽やかで湿気が少ない。
今日こそは最高の昼寝が出来そうだと目を閉じ、夢の世界へ意識を飛ばそうとしたまさにその瞬間、丘の下の方から誰かが登ってくる気配を感じた。
チッ、と思わず舌打ちが出てしまう。
ここで昼寝をするのを日課にしてから2年近く経つが、辿り着きにくさと見つけにくさのせいか俺以外の人間がここに来たのを見たことがない。
だからこそ気に入っていたのだが、ここも離れなくてはなるまいかと思考を巡らせているうちに、気配の主がもうすぐそこまで近づいてきていた。
俺のうとうとタイムを邪魔した上に最高の昼寝場所から俺を追い出そうとする狼藉者の面を拝んでやろうと振り返ると、そこには長い金髪の小柄な少女が-----------------------------
行き倒れていた。
「……………………………………は?」
思わぬ光景に絶句する。
その面拝んでやると意気込んで振り向いた俺の気力と労力返せ。
今更だが、俺、シオン=アルヴァレズという人間は基本的に面倒事が嫌いで、人付き合いもとことん苦手でコミュ障だ。
だからこんな時、いつもの俺の思考回路を辿れば
「声もかけずに迅速に立ち去る」
という側から見たら最低な、俺としては最適解な行動に出ていたはずだったんだ。
なのに。
「おい」
何故かこの時に限って。
「大丈夫か?」
声をかけてしまった。
呼びかけに反応して、倒れていた少女が瞳を開ける。
そして何を思い出したのか、泣きながら
「…………助けて……ください………」
消えそうな声で、そう言った。