エルフの村での生活
狩りからの帰投後...
「おう、レインちゃん!! 帰ってきたか!!」
「クレインさん。この前教えて貰ったお菓子が女性の方々に人気で、売り出してすぐに売り切れたんです!! また教えてくださいね!!」
「レインちゃん先生!! また勉強教えてよー!!」
「バカッ、クレイン姉は僕にジュウドーを教えるんだぞ!!」
「クレインちゃん!!」「レインちゃん」「クレインさん!!」
....
村人とすれ違うたびに皆、声をかけてくれる。
エルフの村人達は気さくな人達が多くて、特別人付き合いが得意でない俺でも直ぐに馴染む事ができた。
「あなた村の人気者ね、引っ張りだこじゃない。村長の姪である私も嬉しいわ」
一緒に帰投し、隣を歩くエレンが言葉通り、とても嬉しそうににこにこ笑っている。
「姪がエラソーに言うなよ」
「何よ、本当に嬉しいんだから良いでしょう? ‥‥それにしても、本当によくここまで馴染む事が出来たわね。もうこの村の有名人よ、あなた。一応この村、あと少しで町と呼べる位には人口はある筈だけどあなたのこと知らない人なんか居ないってレベルよ」
「特に何もしてないよ。ただ気がついたらこうなっていたと言うか....」
最初のきっかけは料理だったと思う。この世界の食材は前世と同じものが多く、ハンバーグを再現出来るかチャレンジしていたのだ。
前世の高校で料理研究部という部活にも兼部していたので腕の自信は人並み以上にはある。
結局は完全には再現出来なかったのだが、余った試作品を宿屋の宿主に譲ると、これがまぁとても美味しかったのか村のなかで吹聴してまわったのだ。ちなみにひき肉は風魔法を応用して作った。
その結果、なんやかんやしていると期せずして村の人気者になってしまっていたのだ。
美味しいお菓子を知らないかと菓子屋のお姉さんに聞かれたり、俺の使う武術は何かと聞かれたり、前世の式を使って計算していると勉強を教えてほしいと子供から大人まで集まってきたり....と。
前世での努力がこんなところで報われるとは思っていなかった。
お世話に鳴っている村の為になっているのなら尚更とてもいい気分になる。
「ただなぁ....」
「どうしたのよ、なにか不満でも?」
「いや、そうじゃなくて..いや不満だな」
「何がよ? 皆あなたのことを仲間だと認めているし、あなたもみんなの役に立てているじゃない
うん、それはいいんだよなぁ。そうじゃなくてねぇ....
俺はため息をつき自分の不満を話す。
「女の子として扱われる事に対して不満がね....」
「ブフゥッ!!」
俺がそう言うとエレンが吹き出した。そしお腹を押さえてケラケラ笑い出す。言っちゃ悪いけど美少女顔がすっごい歪む位笑ってる。
コイツ....人の気も知らないで....。
「くふッ、はぁはぁ。....うん、面白いね」
「殴るぞお前」
お前あれだぞ、クレインって名前が可愛くないからってレインちゃんって呼ばれてるんだぞ。
元男の俺にはちゃん付けはキツすぎるんだよ。
「いや、だってねぇ。こんな美少女の中身が男だなんて..はふッ..ずっと一緒に居た私でさえ、いっ今の今まで忘れてた事よ? もうてっきり女でいることを受け入れているとばかり....ふふふっ、お腹痛い」
「ちがわい!! 皆一応俺が元男だと知ってる筈だし、俺だって男だったときと態度変えてないんだぞ。なのに皆俺の事を女の子みたいに扱ってきて....今のこの着てる毛皮の服だって買うのに苦労したんだぞ。主に女性達の人形見たいに扱われて」
今は毛皮のコートと腰巻き、絹でできたシャツと長ズボンで身を包んでいるけれど....思い出したくない。スカートがまさかあそこまで防御力(主に下着に対して)が低いとは。
あんなにスースーするのよく皆履けるよね。
「ああ、私も聞いたよ。とても似合ってたみたいじゃない。今度私にも見せてよ、スカート履いてる所」
「絶ッッッ対に嫌だ!!」
結論、皆の役に立てて俺の努力が報われたからといっても女の子として扱われるのは精神的にキツイ。て言うか恥ずかしいからその内どうにかしないとな。
「....前世の努力って言ったら俺のユニークスキルの取得も関係してるんだろうなぁ」
「んん? 何か言った?」
「いや、何も」
こいつに俺のスキルについて話すと五月蝿いからな。
俺のユニークスキル【可能性獲得】。カテゴリーはパッシブスキルに属している。
このスキル名の可能性って部分。多分前世の億万分の一である二次元的な出会いに会える可能性を捨てなかったのが関係してるんだろうなぁ。ここでも努力が報われている。
この幻書の声による説明によると「あらゆるスキルに目覚める資質を得る」スキルらしい。
この時、全くそのスキルについて理解出来ていなかったが、後に幻書の声に詳しい説明聞くとどうやらかなりのチートな力を複数備えているスキルらしい。
一つ目、最初の説明通りあらゆるスキルに目覚める資質、可能性を得る。
どうやら人によって目覚めるスキルには適性が必要らしく、このスキルは全てのスキルの適性を得ることが出来るらしい。
さらに、スキルに目覚めやすくなるらしく、皆がスキル習得に必要とする覚醒条件よりも早く、または簡単になるらしい。
例えば【剣術】スキルは通常、何度も剣を振るい鍛練を行い、習得条件に必要な技術を得て、それ相応の実践経験を積むことでようやく得ることが出来る。
だが俺は前世で軽く剣道をしていたぐらいの経験と技術とこの世界で数体の魔獣を狩るだけでてに入れてしまった。
いや、ほんとにかじった程度しかしてないんだぞ、剣道。
二つ目、スキルスロットの限度が無く、幾つでもスキルを習得、発動できる。
あらゆるスキルに目覚めるという効果故かスキルスロットの上限がないようなのだ。
これは大きなメリットで、様々なスキルも持った状態なら時と場合によって使い分けできるのだ。
三つ目、スキル同士を合成し、新たなスキルを得る事ができる。
どうやら、習得したスキルの中に似た属性のものや相性のいいもの同士で合成して新たなスキルを得ることが出来るみたいなのだ。
一度後衛職も視野に入れてた時、アサルトスキル【水玉】という大量の水を圧縮した巨大な弾を放つスキルを習得したことがあった。
ある日、村の子供たちと水遊びしているなかで教わったサポートスキル【水華】という水で花を作る趣味の範囲内、だがかなり技術を要するスキルを教えてもらった事があった。
そして合成出来ることを知った俺はこの二つのスキルを合成することでエクストラスキル【水操作】を得ることに成功したのだ。
(幻書のスキル一覧から直接合成する方法と幻書の声に語りかけることで合成できる)
さらに、合成したスキルは消えず、習得した状態のままの為、なんの躊躇いもなく実践出来るのが嬉しいところだ。
四つ目、殺した対象の持つパッシブスキルを得る。
これが特に強力なスキルだ。
例えば俺が一度狩ったことのある『キラーラビット』は空中をその足で蹴ることで飛び回る厄介な魔獣だ。
これを俺が殺す事でキラーラビットの固有スキル【宙蹴り】という宙を蹴り、飛び回ることのできるスキルを得ることができたのだ。
この効果は村長とその姪であり同期であるエレン以外には話していない。
この効果は要するに殺せば相手が何であれスキルを奪えると言う見方も出来るのだ。そう、相手が知性を持つ人であろうとエルフであろうと。
これを村人が知ると怯えてしまうかもしれないと言うことで他の皆には黙っている。
この方法でてに入れたスキルは村人、狩り仲間の前でも使わないようにした。
幻書の声がスキル獲得報告してきたときは本気でビビったよ。偶然誰にも聞かれてなくて良かった。(幻書の声は本人の意識に直接語りかける様にできるらしかった。勿論今はそうしている)
この計四つのチート効果を【可能性獲得】だけで所持しているのだ。
....エレンがやたらと俺のスキルについて語ってくるからこと細かく覚えてしまってるな....。
耳タコ耳タコ。
まぁあらゆるスキルに目覚める資質、可能性を秘めた【可能性獲得】と前世の努力と経験を合わせる事で様々なスキルに目覚めることができたわけでした。剣道なら【剣術】料理研究部なら【料理】などなど....これから役に立つだろう。
とまぁ俺がスキルの効果を再確認、把握していると、妙にソワソワしながらとなりを歩くエレンが俺に声をかけてきた。
「クレイン。も、もうすぐ、あなたの宿ね」
「ん? あぁ、そうだな。今日はそろそろお開きか」
「あ、あの。その事なんだけど..」
「なんだ? どうした」
なんだエレンのやつ、ずっとソワソワして。
「言いたいことがあるなら言えよ」
俺がそう言うと、どこかで緊張した面持ちで俺の目を見る。
な、なんだ? どうしたんだよこいつ....
「わ、私に料理を教えてほしいの! あなたの家で、この後直ぐにッ!!」
「....はぁ?」
何でまた料理なんて....。て言うか、ただ料理を教えを請うだけでこんなに緊張なんてするか?
「ほ、ほらあなたって前世で部活動? で料理もしててすごく美味しい食べ物作れるんでしょっ!?」
「う、うん。まぁ人並み程度には、だけど....」
「わ、私料理うまくできないから、その、教えてほしいの!! ‥‥なにか変ッ!?」
エレンが顔を真っ赤にして今にも噛みついてきそうな勢いで詰め寄ってくる。
「い、いや。変じゃあないけど」
「ダメなの!? 良いの!?」
「う、うーん。今日は疲れたしまた今度、そのうち....」
「そ、そのうちって....」
俺が断ろうとすると赤かった顔がシュン‥‥と落ち込んだ。少し涙目になっている様にも見えるなぁ....。
「わかった!! わかったから!! 今日、この後教えてあげるから!!」
その様子を見ることに耐えられなくなり、俺は手をひっくり返して了解する。
すると泣きそうだった顔がパァッと明るくなる。そしてすぐにいつもの勝ち気そうな表情になる。
「し、仕方なくよ!! お婆様に料理を振る舞う約束したからであって、別にあなたの部屋に入りたいからとか一緒にいたいからじゃないからね!? 仕方なくよ仕方なく!!」
エレンは鼻歌を歌いながらスキップを取り出した。上機嫌になられて良かった。どうも俺は昔から女の子のああいう表情に弱い。
それにしてもそんなに嬉しいのか? ....て言うかちゃんと理由があるなら先に言えよ。
俺はため息をつき、エレンの嬉しそうな姿を見て笑みを浮かべて何を作るか考え出す。
「よし。エレン、お前どんなの作りたい?」
その後....
「エレン」
「....はい」
「もっと練習してから村長に料理を振る舞おう。あと許可出すまで俺以外の目の前で料理を作るな」
「......はい」
好きな料理、作っていた料理は前までハンバーガーでしたがパンの価値、ソースの作成の難易度などの理由でタレをかけたハンバーグに変更しました。
所々違和感があるかもしれません。




