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8 オークションへの参加

 薄汚れたスラムの中でその絢爛な建物はとても目立っていた。

 明かりを灯す魔道具がふんだんに使われ、夜であっても昼のような明るさを保っている。

 この絢爛な建物の内部でオークションは行われる。

 建物の周りでは複数の武装した人間が周囲を警戒していた。


 クロは預かっていた『魔炎剣イクリプス』はラントに返却し、案内をするように二人の前を歩いていた。

 ラントとキアラは見慣れない格好をしているので道中ジロジロと見られることはあったが、剣を持ったラントが威嚇すると皆視線をそらした。



 巨大な扉の前で一度立ち止まり、建物の中に入る。


 天井は高く開けた空間が目に入る。


 真ん中にポツンと受付らしき場所があったが目立つのは後ろにある三つの大きな扉だ。

 三つの扉を良く観察する、どうも三つの扉の中の一つ、一番右側の扉から妙な威圧感を感じる。

 入ることを拒否したくなるような嫌な気配だった。

 

 「いいから通せ、金なら沢山ある!」

 「申し訳ありませんが入場券をお持ちでない方をお通しする事はできません。」

 「聞き分けのない奴だな!俺は街では名のある家の者だぞ!本来ならお前みたいな奴が口を利く事すらできない人間だぞ!」


 受付付近で揉めている集団がいた、皆一様に綺麗な武器や防具を身につけている、その中で唯一人防具を着けず、集団の先頭に立ってわめき散らしている人物がいた。


 「入場券をお持ちでない方はお通しできません、入場券は予めこちらが素行調査し信頼足る方にしか配布をしていません。参加されている方の機密保持も兼ねています、どうかお引き取り下さい」


 「ふざけるな!俺の親父はな、スラムに併設する町を治めている町長とも懇意なんだ、俺が親父に頼めばここを潰すことくらい簡単なんだぞ、聞けばここでは非合法な品を扱っているそうではないか、然るべき機関に通報したっていいんだぞ」


 「そうは言われましても規則ですので、お通しする事はできません」

 「いいから通せ!口答えするな!お前じゃ話にならん!責任者を出せ!」


 「どうしてもお引取り頂けませんか?」

 「くどい!通せと言っている!」

 「仕方がありませんね」


 そう言うと受付の女性は男達を一番右側の扉に案内した。嫌な気配がした扉だ。


「どうぞお通り下さい」

「最初から素直にそうしていればいいんだ、まったく無駄な時間を取らせやがって」


 怒鳴っていた男を先頭にその集団は右の扉に入っていった。全員が入った後、扉は自動で閉まった。

 

 「皆様大変ご迷惑をお掛けしました、引き続き受付を行っております」


 それを境に周りで傍観していた者たちも受付に並び始めた。

 他の客は左の扉や中央の扉に案内されている。


 「クロ、右側の扉に入るとなにかあるのか?俺達はどれに案内されるんだ?」

 「僕達は左側だと思うよ、真ん中は特別な人たちが案内される所だと思う」

 「右側は?」

 「さぁ?」


 (どうなったんだろうか、僕も気になる)


 「兄上、入場券を持っているのですか?」

 「ああ、なんとか手に入れることができた」

 「信頼足る方にしか配っていないらしいのですが兄上は大丈夫なのですか?」

 「信頼足る方が信頼して譲ったから大丈夫って理屈らしいぞ」


 剣を売って得た金でウルスから購入したのだとクロは思っている。

 またキアラが暴れる事を危惧したクロは口を閉ざした。


 「見た限りお金も支払わなければ入れないようなのですがどのくらい払えばいいのでしょうか」

 「そうだったか、いくらだったかな」



 「一人金貨10枚だよ、僕は払えないから外で待っているね」

 「そうなのですか?それならば私が払います。クロ君、せっかくですから一緒に入りましょう」

 「いいの?ありがとう」


 並んでいるとクロ達の番が来る。キアラは受付で三人分の入場料を払った、金貨三十枚、一般人が一月で稼ぐ額をポンと払った。


 「館内では武器、及び危険な魔道具の持ち込みは禁止されています、お持ちでしたらこちらでお預かりします」

 「帯剣禁止か、まぁ当たり前か」


 ラントは素直に剣を渡している、それに対しキアラは渋々といった感じで渡していた。


 「そちらのお客様の仮面は……えぇ?失礼しました、魔道具ではないようですね、どうぞお通り下さい席は自由席となっております、オークションに参加される方はこちらの番組札をお付け下さい」


 一番左の扉に案内される、扉をくぐると長い通路が続いていており床には綺麗な絨毯が敷き詰められていた。


 「クロ君、君がつけている仮面は魔道具ではないのですか?」

 「これは趣味で着けている仮面だよ、お気に入りなんだ、格好いいでしょ」

 「……そうですね、格好いいと思います」


 (やっぱり分かる人には分かるんだよ、キアラはセンスいいなぁ)


 隣でなぜか苦笑いをしているラントがいた。



 オークション会場に入る。中に入ると明かりを灯す魔道具がステージを眩しいくらいに照らしていた。

 席は半分以上が埋まっており若者から老人、様々な人種がいる。


 鉱山でしかその姿を見せないという鉄鋼族もいた。

 他にも辺境の蛮族と呼ばれる黒角族の集団もいる。


 「おいクロ、さっさと座ろうぜ」


 ラントに急かされ入口付近の席に座る、ちょっとステージからは遠い。

 しばらく席で待っていると空席も減り始め、入口のドアが閉められる。


 「みなさん大変お待たせしました、これよりオークションを始めたいと思います!」


 司会が声量増幅の魔道具を使い会場全体に声を響かせる。

 観客席の照明が消され明りはステージと出口付近のみになる、会場の客は大盛り上がりで指笛を吹きはじめる者もいた。



 「兄上、『風神の腕輪』が出品されるとして、どのくらいの値段になるのでしょうか」

 「分からん、だがなんとしてでも落札しなければ、このままだと親父に顔向けできない」


 「あまり熱くなるのは良くありません、予め決めた値段で落札するべきです、我を失って手持ち以上の金額で落札はしないで下さい」


 「分かっている、それくらいの分別はある」


 「もし兄上の手持ちで足りなければ私が追加で出します、金貨3000枚くらい出せるので使って頂いてもかまいません」


 展示ケースに入れられた商品が台車に乗せられて運ばれてくる、防犯の為周りを複数の屈強な男達周りを囲んでいた。


 「本日最初の商品はこちらになります!どうぞご覧下さい!」


 最初の商品は剣のようだった。腕輪ではなかった為一先ず落ち着く。

 司会者は商品の説明をするため声量増幅の魔道具を握り締めていた。


 「こちらは氷霊剣フェンリス、この剣、名前の通りただの剣ではございません、柄の部分に魔石が組み込まれており、切りつけた相手を傷口から凍りつかせる事ができる魔道具です!とある剣士がお金に困り手放した一品です!金貨1000枚からのスタートになります!」


(これ、ラントが手放した剣じゃないか?)


 売却額の倍の値段で競りにかけられている。

 横を見るとキアラが目を見開いていた。


 (あーあ、せっかく落ち着いてきてたのに)

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