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3 預かった魔道具

 目の前には膝を突いて頭を下げる一人の男が居る。


 先程屋台の親父と言い争っていた男だ。



 「スラムの案内をしてくれ!頼む!」


 太陽は中天を過ぎたばかりだった、地面に写る自分の影は短い。

 いつもならば午後のゴミ漁りをしている時間だった。


 目の前の男をどうしようかと悩む。

 往来の真ん中で大の大人が膝を突き頭を下げている、そんなおかしな状況だ。


 周囲の視線も自然とこちらに集まる。



 「忙しいので無理です」


 関わるべきではないと判断し、即座にその場から離れようと足を進める。

 だが男は食い下がってきた、回りこんで再び膝を突く。



 「頼む!お願いだ!他に当てが無いんだ!」


 そういって男は外套を掴んでくる。


 (あまり引っ張らないで欲しいな、中身を往来で見せたくない)




 「お礼もする!金貨を3枚払うから!」




 (金貨3枚?)


 そう言われて一瞬心が揺らいだ。


 金貨1枚稼ぐのにゴミ拾いだけでは1年以上掛かる。


 そんな金貨を3枚払うと言われ、少しだけ案内をしてもいいかという気分になってきた。


 「盗品が流れる場所とかを案内してくれればいい、見つからなくても報酬は払う!」


 そこまで言われると、案内するのも吝かではないと思い始める。


 ただ後々難癖をつけられてお金を払わない可能性が頭をよぎった。


 「分かった、案内するから前金としていくらか払って」


 そう言って手を差し出すと男は困ったような顔をした。

 手を頭の後ろに当てながら気まずそうに口を開く。


 「それがな……今は手持ちがないんだ」


 そう聞いた瞬間、クロの中にあった金貨を貰えるという期待感は一瞬にして無くなった。

 

 「さようなら」


 逃げよう、関わるべきではない。

 男に背を向け早歩きでその場を去る。


 「待ってくれ!話を聞いてくれ!」


 男はこちらに手を伸ばしてきたが無視をして歩き続ける。

 他の人に頼めばいいのに、男はこちらに追い縋ってきた。

 


 「家に帰れば金はある、だが今は訳あって家には帰れないんだ!だから代わりにこれを預ける!我が家に伝わる名刀だ、金貨500枚以上の価値はある!」


 そう言って男は腰に差していた二本の剣のうち一本を差し出してきた。


 「これを預ける!俺が金を払わなかったら売ってもいい!だから頼む!」


 しぶしぶ男が差し出してきた剣を受け取る、だが重くて落としそうになってしまう。

 なんとか体制を建て直し剣を改めて観察する。


 柄の部分には魔石が埋め込まれている、鞘から刀身を引き抜くと美しい波紋があった、揺ら揺らと波紋に沿いながら赤い光が瞬いている。


 どうやら高い物だということは間違いないようだ。


 (いざとなればこの剣を売ればいい、捨て値でもそこそこの値段にはなるはずだ)

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