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2 肥溜めの拾い物

 悪臭が鼻につく。 

 目の前に広がる大量のゴミが原因だ。


 スラムのゴミ集積所を歩く。

 ゴミ集積所はまともに管理されておらず、風が吹けば辺りに嫌なにおいが流れていく。

 身につけている仮面と外套に匂いが移りそうだった、あまり長居はしたくない。

 ゴミ山に手を突っ込みゴミを掻き分ける。

 そうしてお金に変えられそうな物を探すのだ、だが今日は日が悪いのか成果は無い。


 (今日はもう帰ろうか) 


 そう思い帰り道に目を向けた所、不自然に盛り上がったゴミ山を見つけた。

 ゴミを投げ捨てただけでは出来ない、意図的に積んでいったようなゴミ山だ。


 (なんだろうあの盛り上がりは?)


 ゴミ山に手を掛け崩していく、すると底の方に綺麗な木箱がみえた。


 (木箱?)


 ゴミの中から木箱を取り出す、箱はそれなりの重さがあった、蓋を開け中をみると高そうな布で何かを厳重に包んでいる。

 はやる気持ちを抑えながら慎重に布を取っていく、箱の大きさに対して中の物はあまり大きくない。

 布を取り払う、すると中から小さな指輪がでてきた。




 *




 スラムにある屋台街を外れ、坂道を少し登った先に一軒の店がある。

 その店はスラムの住人から買い取りをしているウルスという老人がいる店だ。

 ゴミの中から稀に出てくる貴金属の回収などをしており、持っていくと換金してくれる。


 先程ゴミ捨て場で拾った指輪を換金しようと店を訪ねることにした。


 「銅貨一枚だな」

 「安っ!?」


 予想以上の安さに抗議の声を上げる。

 指輪が銅貨一枚な訳が無いだろうと。


 「指輪と言ってもこれは指輪型の魔道具だな、本物の指輪ではない」

 「魔道具?」


 魔道具とは魔石が取り付けられた道具だ、どの魔道具にも必ず魔石は付いている。

 魔石がエネルギー代わりになり道具を起動させるのだ。

 

 「付いているのも宝石ではなく魔石だ、どんな用途か分からない魔道具など銅貨1枚で十分だ」

 「ならいい!売らない!」


 そう言ってウルスから指輪をひったくる。


 「何処に持っていっても同じ値段だと思うがな、好きにしろ」


 そう言ってウルスは店の中に戻ろうとした、だが何を思ったか途中で足を止め、こちらを振り返った。


 「クロ、お前ここにきてからどのくらいだ?」

 「五年か六年くらいかな?」

 「ここで子供が生き残るのは難しい、大人だって数年で死ぬ者がほとんどだ、だがお前は長い間生き残っている、何か特別な事でもしているのか?」


 「ただ普通に過ごしているだけだけど」

 「そうは言ってもここはスラムだ、望んでいなくても危険な事に巻き込まれることはある。その仮面、いつも身につけているが何か意味があるのか?怪我でも隠しているのか?」

 「この仮面?これは格好いいから着けているだけだよ。ただのお気に入り」


 そう言った瞬間ウルスが顔をしかめるのが目に入った。


 「言いたくないなら別にかまわん、深く立入るつもりはない」


 そう言ってウルスは背を向ける。


 「最近のスラムは前より物騒になってな、今まで見なかった人や亜人がこちらに流れ込んできている、昨日も一人若い女が亡くなったそうだ、あまり危ないことはするな」


 そう言ってウルスは店の奥へと戻っていった。





 

 *





 ウルスの店を離れてから数刻。

 街とスラムの境には屋台街がある。


 今日の食事を屋台の安い食事で済ませようと足を伸ばす事にしたのだ。


 表で屋台を構えると場所代を払わなければならない為、無税で商売が出来るこちらで商売をする者がいる。


 値段もスラムの外の食事よりは安い、衛生面は問題がありそうだがそれは値段相応だ。


 人の行き来もそれなりにあり、皆それなりに稼げてはいるようだった。

 屋台では食事を提供している者もいれば日用品を売り出しているものも居る。


 そんな屋台街の店を眺めながらゆっくりと歩いていると、前方で言い争う声が聞こえてきた。



 一人は屋台で酒を提供しているスラムの人間だ、そして言い争っている相手はあまりこの辺りでは見ない人間だった。

 民族衣装のような物を身につけ腰には二本の剣を差している。


 「昨日俺と一緒にいた連れだ、何処に行ったか教えてくれ!」

 「知らないって言っているだろう、これ以上は商売の邪魔だ、何処かへ行ってくれ」


 屋台の親父はその場に強引に椅子を置き、強引に男を移動させる。




 民族衣装を着た男はそれ以上食い下がらなかった。

 屋台から少し離れた位置で呆然と立ち尽くし動かない。


 (トラブルかな?巻き込まれたくないし離れよう)


 そう思いその場を離れようとした。

 だがその場に長く留まりすぎたせいだろう、取り残された男と目が合ってしまった。


 「そこの子供!ちょっといいか?」

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