第4話=交通事故
いつも変わらない、朝仕度。
顔を洗って、歯を磨いて…。
最終チェックに、鏡を覗きこんだ。
長い黒髪に、やる気のなさそうな瞳。
典型的な日本人の顔だ。まあ、一般よりもほんの少しだけ目が大きいだけだ。
体型は、太くもなく、細くもなく。まな板な胸が恨めしい。…括れはある!あると思いたい。
毎日この平々凡々な顔を眺め、学校へと繰り出す。
それこそ、毎日同じ道を通って行くのだ。正直、飽きる。
「…行ってきます」
家の奥から返事が返ってくるのを確認し、私は朝日が降り注ぐ道路へと踏み出した。
あーあ、おもしろい夢だったのに。残念。
未だに朝の夢を引きずりながら、信号のある交差点で止まった。
信号はすぐに青に変わった。
今日はツイてるんじゃない?すっと通れたもんね。
横断歩道の白い部分だけ、歩いてみたり。…小学生かよ。
ぽんぽんッとリズムよく進むなか、何故か回りの人が叫んでいる。
こっちを向いて、手を振り大声で叫ぶ。
「こっちへ来い!!」
何?…私、あんたの事知らない。
サラリーマンのお兄さんや、酒屋のおじさん。白髪のおばあさんまで、必死の形相で私を呼んでいる。
ふと、みんなの視線の先を見てみた。
背後を振り返ると、見えたモノは、
……大型トラック。
そう、やけにスローモーション。本当はかなりのスピードなんだろうけど、今の私の目にはゆっくりにしか写らない。ゆっくり、ゆっくり近づいて来る。
なぜだか、恐怖はわかなかった。
これは、非日常なんだって…体が熱くなった。
トラックのお兄さんは、居眠りをしていて、私に気付かない。
跳ね飛ばすの?
弾き殺すの?
まあ、どちらも結果は同じ。
私、死ぬんだ。