第3話=平凡のレール
夢の中の私は満足そうに笑った。白い雲は限りなく広がり、私を柔らかく包む。そんな感触を楽しみながら、私は足を投げ出した。
あー、これからどんな生活が始まるんだろう?
楽しみでもあり、不安でもある。
これで、今までの安穏とした生活ともおさらば。
これからは、スリルと冒険に満ちた世界に生きるんだ!
ワクワクと興奮が止まらない。アドレナリンが沸きだす感じが、体を巡る。
緊張感にも似たコレは、私はとても好きだった。
「――…さい、…っきなさい!」
お母さんの呼ぶ声が聞こえる。ああ、もう起きなきゃ。
さよなら、私の夢。
徐々にはっきりしていく意識の中で、白い雲が遠ざかっていく。
きっと神様だなんて、夢の造形物。空想の産物。私が勝手に創りあげた、架空の人物。
一気に、私の中が冷めていった。
急激に冴え渡る頭脳の端で、自分を嘲った。
なんだよアミューリアって?
イタイ子にも程があるよ。
仕方ない、だってそういうのが好きなんだから。ため息がつきたい程、自分のそういうところが好きではない。ほんと、嫌な性格だよ。
母親の大きな声を聞きながら、私は上半身だけ起き上がり、ぐーっと伸びをした。
ああ、また平凡な一日。
代わり映えのしない毎日。
…おもしろい事、起きないかな。
そんな気持ちが頭を占める。私はそんな思いを切り替えるように頭を振り、階段を下りた。