第1話=神という名の爺さん
「…誰ですか」
いきなり目の前に現れた、おじいちゃん。
あ、私の祖父ではないので。ちなみに言うと。私のおじいちゃんはもっとダンディだよ。
私の前で胡座をかいて座りながら、その長くて白いあごひげを撫でている。そのシワの刻まれた体を包む白い服から、少し神々しい雰囲気が漂っている。
「…誰ですか」
応答ナシだったから、もう一回聞いてみる。…ボケてたらどうしよう。
「神じゃ」
「ああ、髪ね!確かに少ないけどさ、私のお父さんよりもまだまだイケイケって感じ…」
「誰が髪の毛じゃっ!」
白い眉を吊り上げて怒る『神』。
有り得ない、うん。
有り得ない。
わかってる、だってこれは夢だもの。
なんか辺りに雲みたいな白いモワモワしたモノが充満しているし。
「確かに、これはお主の夢じゃて。しかし、儂は存在しておる」
「…」
「信じとらぬのか?」
「当たり前だよ、どうしてボケた爺さんの話を真面目に聞かなきゃいけないわけ?」
「…ぬ、ボケてなどおらぬ。正真正銘、神様じゃ。Godじゃよ」
「…証拠みせてよ」
「なかなか手強いの、お主」
「手強いー?普通だよ、今の犯社会、反社会ではね」
「…やれやれ、そっちの世界の神はなーにをやっとるんじゃ」
「……」
そっちの世界、その言葉が気になったが、あえて触れない事にする。
…話、長そうだし。
「そうじゃな、お主の事でも言い当ててやろう。
…日八野 臨十六歳。最近、人生が暇で暇で仕方がない」
「人のプライバシー覗かないで下さい」
「………」
はあ、と神様は額に手をあて盛大にため息をついた。