第14話=駆け抜ける閃狼3
正面を向いたまま、シュイが口を開いた。
「…いろいろ役立つと思うぜ?」
「……」
「何?信用してないの?」
当たり前だ。会ったばかりの初対面の男を信じろ、なんて言うほうがどうかしている。じとっと疑いの目でシュイを見つめると、シュイは降参といったように両手をあげ、肩を竦めた。
「お前の仲間に聞いてみな」
「なんで」
「俺の事、知ってっから」
疑わしい。まだ疑念の思いを持ちながらも、アリア姉さんの方を振り返った。アリア姉さんは私のその視線に気付いたのか、ほてった顔を扇ぎながら近づいてきた。
「リン、どうしたの?」
「アリア姉さんっ、なんかこの男が!姉さんがこの男を知ってるって!」
「あら、私は知ってるわよ?」
「へ?!」
なんだ?なんだなんだ?なんなんだ?皆して私を嵌めようってか?!…まったく。嫌になるよ。
私は先の見えない話に再び眉間にシワを作った。その表情を見て、アリア姉さんは含み笑いをした。
「シュイ・レイヴン。…属性は風。駆け抜ける閃狼とか、そんな通り名なんかも聞いた事あるわね。確か今は賞金首だったかしら?」
「しょ、賞金首?!」
アリア姉さんは私の驚きようが面白かったのか、声をだして笑っている。…いや、賞金首とか…。まずこんなとこにいて大丈夫なのか?危ないヤツだったんだなー。
「…」
…私、アブナイ?身の危険とか、迫っちゃってる感じ?賞金首の男は、またグラスに口をつけている。
「あのー…、なんで賞金…かかってるんスか…?」
露骨に変わった私の態度に、シュイは呆れたように息を吐いた。また私の方へ向き直り、長い足を組み替えた。
「ヤバイ情報を手に入れたんだ。…政府の最高機密」
「…どうやって…?」
シュイは私のその言葉に不敵な笑みを浮かべ、また私の方へ体を寄せてきた。
「知りてェんなら、仲間に入れろよ?」
…こ、こいつ…。懲りねーな!