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聖母 〜売春婦から聖母へ〜

作者: いつみゆう

私、美人局(つつもたせ)やってた時期があったの。


美人局っていうのは色気で男を騙し、特定の場所に連れていった後、強面の男を呼んで恐喝する。

それで金品を巻き上げるっていう手口よ。


でも"あの日"からさっぱり足を洗ったわ。

こんな汚れた自分にも何か出来る事があるって思えたのよ。

その時の話をしてあげる。



あの日、私は当時付き合ってた彼氏に言われて出会い系サイトで男を釣ってたの。


その日は二人"かかった"の。


午前中はね、童貞の男だった。

30代位のショボくれた男だったわ。


彼氏の指定したラブホにその男を連れてって、行為に及んだの。

そんで、シャワーを浴びさせてる隙に、彼氏を呼んで……。


……今思えば可愛そうな事をしたわ。

私、バカだったの。

彼氏の事が好きで好きでねぇ。何でも言いなりだった。

私に売春させるクズ野郎だったけどね。


裸で殴られてるその(ヒト)、殴られながらずっと私を見てた。

何か言いたそうな顔でね。

でも私はその時はなんとも思わなかったわ。


そして、彼氏と二人で外を出た後、私にほんの僅かの報酬を与えた後、『午後もよろしく』って言ってどこかに行ったの。

多分……パチンコだろうね。

ホント……とんでもないクズと付き合ってたわ。


そして、午後。

午後は身長が低い男の子だった。

年は20代前半かな。


いつもの通り、行為に及んだ後、彼氏に電話をかけたの。

そしたら、『今、パチンコで手が離せない。とりあえず、ソイツを着替えさせて、因縁つけて拘束し、◯◯駐車場に連れてこい』って言われたの。


私は彼に言われた通り、彼に因縁をつけたわ。

アソコが痛いって。

お前のせいだって。


私は彼を無理やり着替えさせ、外に出て、腕を掴み、◯◯駐車場に一緒に行こうとしたわ。


そしたら彼、「今からどこに行くんですか?」

って聞いてきたの。

私は、その方向を指差しながら見たの。


その隙にその彼、私の手を振りほどいて逃げてったのよ。

私もまずいと思って追ったんだけど、逃げられたわ。

男と女。体力があるのは男でしょ?

まんまと逃げられたわ。


その後、私は一人で◯◯駐車場に行って、彼氏に会ったの。

私、思いっきりビンタされてね。

『その男、見つけるまでアパートに帰って来るな!』って言って、またパチンコに行ったわ。


私、もう血眼で町中を探したわ。

でも、どこにも居なかった。

そりゃそうよね。私だったら真っ先にその町を離れるもの。

彼もそうしたんだわ。


でも私ずっと探し続けた。

愛する彼氏の為に。

ずっと一人で……。


そして飲み屋街を探して歩いていたとき、私、会ったのよ。

午前中に騙したあの男。

顔はボコボコに腫れててね、無惨な顔だったわ。


私、その男と目が合ってね、振り返ってダッシュで逃げたわ。

その男は私を追ってきてた。


でも逃げ切れなくて、腕を掴まれたの。

ここまでだ、殴られる、殺される。

そう思ったわ。


でもその男、私の目を見つめて、こう言ったの。


『こんな僕の為にありがとう』って。


その(ヒト)、今まで誰にも相手にされなかったみたい。

ずっと童貞で、風俗に行っても風俗嬢からキャンセルされるタイプの人間だったみたい。


ブサイクじゃないんだけどね。

きっとそういうオーラを持っている人だったのよ。

私は平気だったけど。


『ありがとう……ホントにありがとう』って泣きながら私の手を握った後、帰って行ったわ。



私、そこで思ったの。

私も何かの役に立てる人間なんだって。

あんなクズみたいな男の為じゃなくてね。


人を癒す事が出来るかもしれないって思えるようになったの。



私、そう思ってから、彼氏と縁を切ったわ。

『お前が必要だぁ!』って泣いてたけど、あの時の顔、吐き気がしたわ。



今は私、医療福祉の勉強をしているの。

これからは困っている人に尽くして生きて行きたいの。


だって、もう一度見たいじゃない。


『ありがとう』って純粋に喜んでる人の顔をね。

派手な女はかつて一人の男性を救った。


それがきっかけで本格的に人助けの道を歩み出そうとしていた。


過去がどうあれ、今が光輝いていればそれでいいのだ。



……この話を聞いてるとき、強面の男性が私を見ていた。

まさか……

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[気になる点] 最後が恐怖心煽るのですが…
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