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魔術塾対抗戦 vol.37

「なるほどね。つまり。心配してくれたルーナちゃんにきつく当たってしまったのね。でも、なんで私の事、はっきり言わなかったの?別に、元カノとか言わなくても友人だったとかいくらでも理由がつけられたんじゃないの」

「確かにそうなんだけどな……」


 確かにそうすれば、ルーナに対してこんなひどい事を言わなくてもよかった。

 でも、俺には、ルーナに嘘を付くことはできなかった。


 あんなに俺の事をバカにして、いつも強がってばっかりで……。

 でも、俺の事をちゃんと見ていてくれて……。


 そんなルーナには、ちゃんと真実を伝えるべきだったのかもしれない。

 けれど、それを伝えると俺とルーナの間にある何かが積み木崩しのように壊れていきそうで。

 その何かは自分でも分からないし、おそらくルーナにも分かっていないだろう。

 きっと俺は、それが怖くて、結局ルーナを傷つける言葉を投げて、その妄想から逃げようとしたのだろう。


 でも、結局、結末は同じであった。


「翔くん、猫背になってるよ。シャキッとして!」


 考え込んでいた俺は、いつの間にか俯いたまま、猫のように丸くなってしまっていた。

 紗良に再び背中を強打され、体を起こす。

 叩かれた部分は痛みと共にじんわりと温かくなっていく。


「ほんと翔くんは、いつも考え込む癖があるからなー。女の子泣かせちゃったんだから、こういう時は男から!考える前にまずは行動、でしょ?」


 紗良が、にこやかに笑う。

 前にもこんな事があったような……。

 バイトの時にいきなりリーダーを任された時、就活でなかなか内定がもらえなかった時、友達付き合いに亀裂が生じた時……。

 数えるだけでもきりがない。

 それぐらいあの時の紗良は、俺にとっての心の支えだったんだなと改めて感じさせられる。


 でも、今は、紗良の笑顔と共にルーナの悲しげな表情が重なっていく。

 このままだとルーナが俺からどんどん遠ざかっていくような気がした。


 早くルーナの元に行かないと。

 早くルーナに謝らないと。

 早くルーナに伝えないと。


 俺は大きく深呼吸をすると、自分の頬をきつく叩いて気合を入れた。


「紗良、ありがとな。俺気づいたよ。ちゃんとルーナと話してくるよ」

「そうこなくっちゃ!」

「この世界でも紗良に元気づけられるなんて思いもしなった」

「私も翔くんを元気づけるなんて思いもしなかった」


 自然と俺にも笑みがこぼれ、二人ともおかしくなって、声を出して笑っていた。

 笑い声が少し治まると、俺はベンチから腰を上げた。


「さてと、俺そしたら行ってくるわ!紗良は、どうするんだ?」

「私は、もう少しここに座っとく。パーティーと翔くんの元気づけで疲れたし」

「そっか。それじゃあ、また明日」


 俺は、そう言い残しその場から走りだそうとした、その時だった。


「翔くん、待って!」


 後ろから俺を呼び止める紗良の声が聞こえる。

 慌てて後ろを振り向くと、紗良は、先程とは打って変わって、真剣な表情で俺の方を見ていた。

 紗良が、小走り気味で俺の元へと駆け寄る。


「1つ聞きたいことがあるの」

「なに?」

「ルーナちゃんって、翔くんにとってどんな存在なの?」


 紗良の唐突な質問に、俺は言葉が詰まる。


 俺にとってのルーナは、どんな存在?

 きっとその答えは、友人とかそういう簡単な言葉では言い表せない存在なのかもしれない。

 いつも俺の側にはルーナがいる。まるで、昔の紗良のように。

 それぐらいルーナは、俺の心の中の大きな存在になっている。

 そう考えると自然と答えは見えてきた。


「俺にとって、かけがえのない大切な存在かな」

「かけがえのない大切な存在か……それってプロポーズと同じじゃない?」

「なっ!ちげーよ!」

「ほら、顔赤くなってんじゃん!」

「なってねえから!とにかく、俺はもう行くからな」

「はいはい。行ってらっしゃーい!」


 紗良は満面の笑みで手を振って俺を見送った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 見送った後、紗良は夜空を見上げていた。

 黒紫色の空に、無数の星がきらめいている。

 都会暮らしの紗良にとっては、この星々がすごく新鮮に感じられる。


「きれいな星空。そういえば翔くんと見たプラネタリウムも綺麗だったなー。今見てる景色とそっくりで懐かしい」


 紗良は、夜空に向かって軽く微笑んだ。そして、翔太の言葉を思い出していた。


「かけがえのない大切な存在か……。私と付き合ってた時も、そう思ってくれてたのかな?もしもあのまま二人とも続いていたら、きっと私は翔くんの言う”かけがえのない大切な存在”で、一緒に幸せになれたのかな……」


 そう呟きながら、紗良の目からは自然と涙がこぼれていったのであった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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