魔術塾対抗戦 vol.35
「あははっ。レイスさん連れて行かれちゃいましたね」
クレアが苦笑いを浮かべながら、連れて行かれたレイスの後ろ姿を見つめる。
ルーナとセバスも同様にレイスの方に視線を向ける。
一方の俺は、俯いたままだ。
「はあー。睨み合ってても無意味なだけね。さっさと行きましょ」
ルーナがそう言うと、ソラレス魔術師教会の選抜メンバーも頷き、ひとまず解散となった。
俺達は、あらかじめ指定されたテーブルの元へと行くと、シャンパングラスが人数分用意されていた。
そして、俺達がテーブルに着くやいなや、ボーイらしきタキシードを着た、姿勢の良い男が1人ずつにシャンパンを注いでいく。
俺は、シャンパングラスを片手で持ち、自らの顔の前に持っていく。
薄い金色に輝いたシャンパンの中に反射する自分の顔。
(ひどい顔だな……)
シャンパングラスに映る自分の顔が、悲壮感や疲弊感に包まれたような何ともいえない表情をしている事に思わず苦笑する。
「どうしたの、翔太。さっきから様子おかしいよ」
隣にいたルーナが、心配そうに俺を見つめ話しかけてくる。
「大丈夫」
「そんな風には見えないよ。もしかして、さっきの紗良さんと何か?」
「いや、何でもない」
「でも、だって、紗良さんにあった瞬間、翔太の様子が……」
「だから、何にもないって言ってんだろ!何でルーナは、そんなにしつこく聞いてくんだよ!人の心に土足で入っくんじゃねえよ!」
心配して声をかけてくれたルーナに、無意識の内に怒鳴り散らしてしまう俺。
気づいて、口元を両手で抑えるが、もう遅かった。
ルーナは、今にも泣きそうな目で俺を見つめていた。
すると、セバスがいきなり俺の胸ぐらを掴んで、怒りに満ちた表情で俺を見つめる。
「おい、テメェ!ルーナが心配して声かけてんのに何だよその態度は!」
俺は、セバスの言葉に何も言えず、俯いたままだ。
「俺は、ルーナを泣かす奴は、ぜってぇ許さないからな」
「じゃあ、あげるよ……」
「は?今なんて言った?」
「セバスにあげるよ、ルーナ。俺は、ルーナを泣かした許されない存在だ。だから、婚約者のポジションもお前に譲る」
「テメェ、自分が何言ってんのか分かってんのか!」
「分かってるよ。だから、離せよ」
俺は、セバスの腕を目一杯の力で振り払う。
周りを見ると、パーティー会場にいる人達の視線がこちらのテーブルに向けられている事に気づく。
それにルーナは、もう既に号泣していた。
俺は、ルーナの泣きじゃくる顔に視線を落とした後、何も言わずに会場から出て行った。
クレアやセバスも俺の後を追ってくる事は無く、ただ、去りゆく俺の姿を見つめていた。
「はあー。何やってんだよ俺」
パーティー会場の外にある、小さな噴水広場のベンチに腰掛け大きくため息をつく俺。
そして、ポケットの中に忍ばせていたタバコを取り出し、火をつける。
タバコに一息ついた時、隣に誰かの気配を感じ視線を向ける。
「翔くん、まだタバコやめてなかったんだね。あんなに注意したのに」
そこには、東雲 紗良が優しく微笑みながら、俺の方を見つめていた。




