魔術塾対抗戦 vol.32
寮の部屋に戻り、パーティー用の衣装に着替える。
もちろん、タキシードや燕尾服などは持ち合わせていない俺は、仕方なく自前のビジネススーツに袖を通した。
新入社員の俺のビジネススーツは、まだ紺色の光沢が残っており、ブラウン色の革靴もそれほど傷は入っていない。
ただ、現実世界でクールビズ中であったため、ネクタイは持ち合わせていなかった。
俺は、しぶしぶセバスの部屋へと向かい、黒の蝶ネクタイを貸してもらう事にした。
訪れるや否や、怪訝な表情を浮かべるセバスだっま。しかし、そのままの姿で一緒にいると自分の品格を疑われると俺に言い放つとしぶしぶ黒の蝶ネクタイを貸してくれた。
俺は、貸してもらった蝶ネクタイをその場でつけ、待ち合わせ場所の寮の門の前で待っていた。
すると、すぐに黒のタキシード姿のセバスが颯爽の現れた。
髪をオールバックにしており、高身長で姿勢の良いセバスは、気品もあり様になっていた。
横に並ぶと月とスッポンぐらい差があり、俺はこの場から逃げ出したくなった。
俺がそんな思いを抱いてるとも知らないセバスは、ただ無言のままルーナとクレアを待っていた。
すると、ヒールの"コツコツ"とした音が耳に入ってくる。そして、こちらに近づいてくる。
「すいません。お待たせしました」
目の前に現れた美人に思わず目を奪われる。
それは、クレアであった。
パステルグリーンのドレスに、ふんわりとしたお団子を作った髪型。さらには胸元にはピンクゴールドのネックレスが輝いていた。
いつも上品なクレアだが、一段と上品さの格が上がっているように感じられる。
「どうですか?」
クレアが、ドレスの裾を軽く持って俺達に感想を尋ねてくる。
セバスは、無反応であったが、俺は親指を立ててグッドポーズをした。
「わー、ありがとうございます。嬉しいです」
クレアはそう言うと、ニッコリと微笑んで、裾を掴んだまま、上品にお辞儀をした。
「なあ、クレア。ところで、ルーナは?」
「ルーナちゃん……実は、あそこに……」
クレアが、指差す方向には、門の影に隠れてこちらを覗くルーナの顔が見えた。
何やら恥ずかしそうな表情をしている。
「おい、ルーナ。早くこっち来いよ」
「いや、無理。だって……恥ずかしいし」
「えっ、何て?よく聞こえなかった」
「うっさい、先行ってろ。後から行くから」
ルーナは、頑なにこっちに来ようとはしない。
(後から来ても、ドレス姿見えるし、一緒なんだけどなー。ったく、めんどくせぇな、ルーナは)
「おい、ルーナ。お前もしかして、クレアが綺麗で負けたとかおもってんだろ?」
「はあ?なにそれ。確かに、クレアは綺麗だけど、私だって負けてないわよ!」
「じゃあ、見せてみろよ」
「いや、それは……」
俯くルーナ。
ここまで言ってもルーナは姿を現そうとしない。
「あー、もう、めんどくせぇ!さっさと行くぞ!」
そう言うと俺は、隠れているルーナに近づき、腕を無理やり引っ張った。
すると、目の前に現れたドレス姿のルーナに俺は釘付けになってしまった。
紺色の大人っぽいドレスに、綺麗に巻かれた髪の毛。胸元に光るダイヤのネックレスが、上品な魅力を引き立たせている。
「ちょっと!何か言いなさいよ……」
頬を赤らめ、俺の顔を見ずに言うルーナ。
ルーナの言葉で我に返った俺も、ルーナのドレス姿から視線を逸らした。
「いや、何というか、その……綺麗……です」
俺は、頬を人差し指で掻きながら、恥ずかしさを隠しきれずにいた。
「あ、ありがとう……」
ルーナはドレスの裾をギュッと掴みながら、恥ずかしそうに答えた。
俯いたまま、黙り込む2人。まるで付き合いたてのカップルのようで気恥ずかしい。
しかし、俺の背筋に悪寒が走る。
恐る恐る振り向くと、セバスが鬼のような目つきをしてこちらを見ていた。
(やっばい、セバスに殺される)
俺は、すぐさまルーナから離れた。
何とも言えない空気が俺とセバスとルーナの間に流れる。
それを察知したクレアが慌てて俺達に呼びかけた。
「さあ、全員揃いましたし、会場に向かいしょうか」
俺達、4人はパーティー会場へと向かったのだった。




