魔術塾対抗戦 vol.31
「なあ、クレア。あのアリスって子は何者なんだ?」
俺達4人は、意気消沈したレイスを見送った後、パーティー参加の為、一度寮に戻り着替える事にした。そして、今は寮に戻る途中である。
「アリスちゃんは、ソラレスの魔術師で、ソラレスの最高権力者の実の孫娘なんです」
「へぇー……って、えっーー!あの子が最高権力者の孫娘!!」
俺は、驚きのあまり、周りも気にせず大声を出してしまう。確かにアリスは、お嬢様の雰囲気は持っていたが、あの強烈なキャラを見ると、最高権力者の孫娘だなんてさらさら思えない。
それから、クレアは、アリスとの関係を話してくれた。ラグーンとソラレスは兄弟都市で、子供の時から交流があったらしい。しかし、交流があったとはいえ、レイスに対する反応はあまりにも異常だ。
「なあ、クレア。レイスとアリスってどういう関係なんだ?」
「私もあまり詳しくは知らないのですが……アリスちゃんは、レイスの婚約者らしいですよ」
「こっ……婚約者ー!!」
俺は、再び驚きの表情を隠せない。まさか、あんな少年みたいな大人に婚約者がいるなんて。しかも、相手は最高権力者の孫娘だ。
(俺とルーナの事、散々おちょくっておいて、自分も婚約者がいるのかよ。まあ、いい。次会ったら存分にイジってやろう)
イジられて嫌がるレイスの顔を想像すると、ニヤケが止まらない俺。どうやら俺は、性格が悪いようだ。
そんな自己分析をしていると、俺の隣からは殺気に満ちたオーラが溢れ出していた。そう、ルーナである。
俺とクレアがアリスの話題をている間、ルーナの機嫌が悪いのは薄々感じていた。絡むと面倒になると思って無視していたが、何度も舌打ちをするので俺もイラッとしてきた。
「なんだよ、ルーナ。さっきから」
「……んにゃんにゃ。うっさいのよ!アリスの話題ばっかり!」
ルーナの、両手にはガデムからもらった大量の肉串。まだ、やけ食いが止まらないようだ。
「まあ、仲悪いのは分かるけど。そんなに食ったら太っ」
俺が、言葉を発しようとした瞬間、ルーナの拳が俺の右頬に直撃する。衝撃で思わずよろけると、今度はなぜかセバスが眉間にシワを寄せ、俺の胸ぐらを掴んでくる。
「てめぇ、女に向かって、何デリカシーのねぇこと言ってんだ!あぁっ!今度言ったら分かったんだろうな」
「分かった。分かったから離せよ」
セバスは、怒り顔のまま、乱暴に俺を手放す。相変わらず、ルーナの事になるとムキになるセバス。とりあえず、この険悪な雰囲気を何とかしないと。
「ルーナ、さっきはごめん」
俺は、ルーナの肩にそっと手を置いた。その瞬間、ルーナはギロッと俺を睨みつけ、俺の腕を掴むと、そのまま背負い投げをされた。
俺は、そのまま地面に叩きつけられる。あまりの激痛で立ち上がる事ができないでいる。
(こんなにも空が晴れ晴れとしているのに、何で俺はこんなに不幸なんだろう。しかし、アリスの言う通り、やっぱりルーナはゴリラだ)
俺が、空を見つめながら自分の不幸に嘆いていると、クレアが心配そうに俺を覗き込んできた。
「翔太さん、大丈夫ですか。お体大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫じゃない」
すると、クレアは俺の腕を自分の肩に回して、立ち上がれない俺を手助けしてくれた。クレアと共にゆっくりと立ち上がる。そして、クレアをチラッと見ると、クレアはこちらに優しく微笑みかけてくれた。
(やっば、何だよその笑顔。天使すぎる)
思わず、頬を赤く染めてしまう。すると、俺の肩を誰かが殴ってくる。その正体は、ご機嫌斜めのルーナだ。
「何、照れてんのよ!マジでキモい」
「はぁ〜?べっ、別に照れてなんかねぇよ!」
「何その反応!ほんとキモい。フンッ」
ルーナは、俺から目をそらし、そっぽを向いた。俺も、ルーナにイラっとして舌打ちをかます。
それ以降は誰も言葉を発しない終始険悪ムードの中、俺達4人は寮へと戻ってきたのだった。




