魔術塾対抗戦 vol.30
その女の子は、身長は、レイスと同じぐらいの150cm程。髪はロングの金髪で、長い髪はクルクルと巻かれていた。パッチリとした青い目に可愛らしいエクボが特徴的で服装はピンクのワンピースに白のカーディガンを羽織っていた。どこかのお姫様やお嬢様のような雰囲気だ。
女の子は、レイスの頬に何度もキスをした後、少し離れた所にいるルーナ達に目をやった。すると、女の子はレイスの腕を無理矢理引っ張り、レイスと共にルーナ達の元へと歩み寄ってきた。
「あらー、お久しぶりですわねー、クレアさん、セバスさん。それに、泥棒ネコさんも」
その女の子は、クレアとセバスには礼儀正しくお辞儀をしたものの、ルーナにはお辞儀をせず、再びレイスに抱きつき、3人に見せつけていた。すると、ルーナは、眉間にシワを寄せて顔を引きつらせ、指をポキポキと鳴らし始めた。
「だーれーが、泥棒ネコですってー」
「あら、違いました?それとも泥棒ゴリラさんですか?」
「クゥーっ!!相変わらずムカつく女ね」
「それはこっちのセリフですわ。私という麗しい妃がいるというのに、いつもレイス様とご一緒だなんて」
2人は、強く歯を噛み締めて、いがみ合っていた。2人の間には、まるで電撃か何かが走っているようだ。見かねたクレアが2人の仲裁に入る。
「落ち着いてください、お二人とも。それに翔太さんの事忘れてますよ」
「翔太さん?もしや、別世界から来られた方?」
「そうです。あそこに立っている方です」
クレアは、呆然と眺めていた俺の方に歩み寄ってきた。俺も、クレアが隣に来た事で我に返った。
「初めまして、佐藤 翔太です。よろしくお願い致します」
俺は、彼女に下手くそな作り笑顔で挨拶をし、深く礼をした。すると、彼女も深く礼をした後、自己紹介を始めた。
「ごきげんよう、私は、ソラレス魔術師教会所属のアリスと申します。以後、お見知り置きを」
「……ご……きげん……よう」
彼女は、ワンピースの裾を掴んで、気品のある礼を再び俺にした。俺も、再び礼をする。すると、アリスは俺に語りかけてきた。
「あなた様は、別世界から来られたそうですわね?」
「そうなんです。どこでその事を?」
「プロの魔術師の中では、あなたの事は噂になっておりましたので。それに魔術師対抗戦も参加されるそうで」
「はい……何の実力も無いので正直場違いなのでは無いかと不安で……」
「そうですわね。実力も無いのに出場なんて場違いにも程がございますわ。おほほほほっ」
アリスは、自分の口元に手を当てて、高らかに笑い始めた。俺は、初対面の人に馬鹿にされたのはムッとした。だが、アリスの言っている事は正しい。俺は、どう反応していいか分からず、ただただ苦笑いを浮かべていた。
すると、ルーナが物凄い剣幕で俺とアリスの元へと駆け寄ってきた。
「アリス!あんた、よくも翔太を馬鹿にしてくれたわね。それに翔太も何か言い返しなさいよ!」
「まあ、そうだよな。ただ、悔しいけど事実っちゃー事実だし……」
「ほんと意気地なし!ちゃんとしなさいよ!」
ルーナは、俺の気弱な態度に腹を立てたのか、俺の背中に思いっきり平手打ちをした。俺は、衝撃で前に一歩程よろけてしまう。
そんな様子を目の前で見ていたアリスが、今度は含み笑いをしてルーナに言い放った。
「あら、ルーナさん。なぜその殿方の事でムキになってらっしゃるのですか?もしかして、あなたの殿方という事ですわね」
「そっ、そんな事ないわよ!このバカアリス!」
アリスの言葉に顔を真っ赤にしたルーナは、なぜか再び俺の背中に思いっきり平手打ちをした。俺の体全身に高電流が流れたかのように激痛が走る。
「痛っーーー!何すんだよ、ルーナ!2回も叩く事ねぇだろうが」
「うっさい!あんたは黙ってなさい」
ルーナは、顔を真っ赤にさせたまま、そっぽを向いた。
「ふふふっ。分かりやすい方ですわね、泥棒ゴリラさんは」
「うっさい、アリス!」
「まあ、よろしいですわ。これでレイス様を独り占めできますし。さあ、レイス様、デートに行きますわよー!」
すると、アリスは燃え尽きた灰のようになっているレイスの腕を掴み、物凄い勢いでその場から立ち去っていた。
「あー、ホントムカつくわ!あいつ!」
ルーナは、そう呟きながら、お皿の上に乗ったお肉をやけ食いし始めた。途中、喉をつまらせたようでクレアが心配そうな顔をしてコップ一杯の水を差し出した。ルーナは、一気に水を飲み干す。
「はーっ、ありがとう、クレア。危うく窒息死するところだったわ」
「無茶は禁物ですよ、ルーナちゃん」
「ごめん……」
ルーナが、クレアに謝った瞬間だった。物凄い勢いで誰かが俺達の前に現れた。その正体は、アリスであった。アリスが掴んだ手の先には、抜け殻のようになっているレイスの姿。こんなレイスは今まで見た事がない。
アリスは、息を整えた後、俺達に語り始めた。
「言い忘れてましたわ。今日のパーティーで私達のメンバーを紹介致しますわー。ちなみに、私達のメンバーにも、そちらの殿方と同様、別世界から来た人がありますの。まあ、そちらの殿方よりも数百倍優秀ですので。それでは、皆様ごきげんよう。おほほほほっ!」
アリスは、そう言い残すと再びレイスを連れて、ラグーンのメインストリートに駆け出していった。
俺は、強烈な印象のアリスの走り去っていく姿を、ただ呆然と眺めていたのだった。




