魔術塾対抗戦 vol.28
「何固まってんの?翔太」
レイスが、呆然とした表情をする俺の顔を覗き込んできた。レイスの顔が視界に入り我に帰る俺。そして、俺はレイスに疑問を投げかけた。
「レイス、今、魔術師対抗戦の前夜祭とか言ってたよな?」
「うん、そだよー」
「ってことは、明日から魔術師対抗戦が開幕ってことでいいのか?」
「うん!そっかー、翔太10日間も寝てたんだもんねー。そりゃ、ビックリするか。うわははははっ!」
レイスは大きな声で笑い始めた。しかし、俺には笑い事では済まされない。魔術の特訓をしたのは、魔術塾の演習を入れてたった2回。そんな状態で、本番に臨まないといけない。焦りと不安が一気に俺の心に押し寄せてくる。思わず頭を抱えて、床にひざまずく。
”フンッ”
誰かが鼻で笑った。視線の先には、小馬鹿にした表情で俺を見下すセバスであった。
「てめぇがクソみたいに10日も眠ってた罰だよ。せえぜえ、頑張れや。こんどは死ぬかもしれねぇがな」
「ちょっと、セバスさん。いくら何でも言いすぎですよ。翔太さん、私達がいますから大丈夫ですよ!」
セバスの横にいたクレアが、両腕を折りたたみ、両手をギュッと握りしめ、ファイトと言わんばかりのガッツポーズを俺に向けた。
(やっぱり、クレアは優しいな。こんな俺を励ましてくれるなんて。けど、セバスの発言はキツイものがあるけど、正論だ)
俺は、ゆっくりと立ち上がった。そして、クレアとセバスに礼を告げた。すると、クレアは優しい笑顔を俺に向けた。一方のセバスは、予想外の反応にドギマギした様子であった。
すると、レイスが怪しい笑顔を浮かべてセバスの元に駆け寄っていった。そして、俺の方を見ながらセバスの二の腕をポンポンと軽く叩いた。
「よかったね〜、セバス。翔太が元気になって。毎日、様子を見に行ってあげたから元気になったんじゃないの〜」
レイスの発言に、セバスは顔を真っ赤にさせて、レイスの頭にゲンコツをくらわせた。レイスが頭をさすり、お返しと言わんばかりにセバスの腕に噛み付く。いつも通りの痴話喧嘩。その様子を久々に見れて、俺は自然と笑みがこぼれた。
「翔太さん。セバスさんは、翔太さんに当たりはキツイですけど、優しい方なんですよ。それに、セバスさんだけしゃなくて、私達全員、毎日お見舞いに行きましたから」
「そうだったのか。ありがとう、クレア」
「どういたしまして。けど、1番お礼を言わないといけないのはルーナちゃんですよ。夜遅くまで翔太さんの看病をしてましたから」
クレアの言葉で、俺はルーナの方に目を向けた。すると、こちらを見つめていたルーナと一瞬目があったもののすぐに顔をそらされる。どうやら相当恥ずかしい様子だった。そんなルーナの姿に俺は、心をときめかしてしまうと共に、心から感謝をした。
俺は、みんなの存在の有り難みを改めて感じた。そして、このメンバーで早く祭りを楽しみたい衝動に駆られる。
「レイス!セバス!喧嘩なんてしてないで、早く祭りに行こうぜ!」
「うっせー、カスは黙ってろ。まあ、今日はここまでにしてやるよ、レイス。次は覚悟しておけよ」
「それはこっちのセリフだよ、セバス」
2人は、まるで子供の喧嘩のように、互いにそっぽを向いた。そんな光景に、俺とルーナ、クレアは思わず笑みがこぼれる。
食堂の窓から差し込む暖かな太陽の光が、俺達5人を眩しく照らす。まるで、太陽が俺達を祝福しているように思えたのだった。




