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魔術塾対抗戦 vol.27


俺は、老人からもらった地図を頼りに寮を目指していた。しかし、地図は迷路のように複雑で、見たことない地図記号が描かれていた。


(この地図、どうなってんだよ。もっと単純なの渡せよな)


老人に対して、沸々と不満を湧き上がらせていた。地図とにらめっこし、途中で遭遇したラグーンの人々に助けをもらいながら、何とか寮に着くことができた。


寮の門に着く頃には、辺りは真っ暗で、風のそよぐ音しか聞こえないほど静かになっていた。寮の部屋の明かりもほとんど消えていた。どうやら皆、眠りについているようだ。


俺は、誰も起こさないようにゆっくりと階段を昇り、自分の部屋へと戻る。鍵を開け、部屋に入るやいなやベッドに大の字になってダイブした。


ここに戻るまでの体力と人見知りなのに助けを求めたことによる精神面で、自身の疲弊感はピークに達していたのだ。俺は、そのまま深い眠りについた。


”チュンチュン”

小鳥のさえずる音が聞こえてゆっくりと目を開けた。半端に閉められたカーテンの隙間からは、朝日の光が差し込み、カーテンの色と綺麗な調和を成していた。


俺は、眠気まなこをこすりながら、時計に目をやるともう10時を過ぎていた。完全なる遅刻。俺は、慌ててベッドから飛び上がる。そして、クローゼットにかけてあった制服に袖を通そうとした時、俺は手を止めた。


10日も眠り続けていた俺。きっと皆、心配してくれていたに違いない。でも、どんな顔して会えばいいか分からない。申し訳なさだけが俺の心を埋め尽くしていく。


俺は、制服に着替えるのをやめ、床に乱暴に放置されていたジャージに着替え、食堂へと向かった。食欲はそれほど無かったものの、10日も食べていなかった腹に異常が出ても困る。それに朝食を食べたら少しは気持ちも落ち着いてくるのではないかと思ってもいた。


食堂に着くと、人影は少なく空席が目立った。それもそのはず。もうとっくに登校時間を過ぎている。俺は、大きく一息ため息をついた。その時だった。背後から勢いよく誰かが抱きついてきた。俺の腰元に腕がある。


(もしや……この感じは……)


ゆっくりと背後に視線を向けると、満面の笑みを浮かべてこちらの顔を見つめるレイスがいた。俺は、驚きのあまり、レイスの腕からすり抜け、一歩後ずさりをしてしまった。


「翔太ー、元気になったんだねー!ほんとに良かったよ〜」

「まあな。あのさ、レイス……」

「ん?」


レイスは、笑みを浮かべたままこちらを見ていた。言葉の続きは自分でも分かっていた。だが、なかなか口にできない。それは照れくさいからではない。申し訳なさすぎて、今さら謝っても許してくれないだろうと思っていたから。俺は、口をつぐんだまま俯いた。


「なになに、どうしたの?翔太」

「いや、その……」

「俯いてたらダメだよ。皆、待ってるよ」


レイスは、俺の左肩に手を置き、もう一方の手で何かを指し示していた。俺は、ゆっくりと体を起こし、レイスの手の方向に目をやった。俺の視界に見えたのは、ルーナ、クレア、セバスであった。


クレアは優しい笑みを浮かべて俺を見ていた。セバスは、斜め上を見ながら左頬を指で掻き、照れくさそうな表情をしている。


そして、ルーナは、俺の顔を見ると、満面の笑顔と共に大粒の涙を流し始めた。するとすぐに、ルーナは俺の方に駆け寄り、俺を強く抱きしめた。


俺は、その瞬間、心にじんわりとした温かな気持ちが湧いてくる。自然と両目から涙が頬を伝う。俺は、そっとルーナの背中に手を回した。


「ルーナ、俺のジャージ、ビチョビチョになるよ」

「うっさい、このバカ!どれだけ心配したと思ってんのよ!」

「ごめん……」

「謝んないでよ。翔太が死んじゃったらと思ったら……」

「おいおい、俺は死なねーよ。ルーナ、ただいま」

「おかえり、翔太」


俺は、ルーナを強く抱きしめ返し、そっと髪を撫でた。ルーナの温もりが俺の心を包み込んでいく。


”ゴッホン”

誰かが咳払いをする音が聞こえた。音の聞こえた方に目を向けると、レイスが呆れた顔で俺とルーナを見つめていた。


「お二人さん。アツアツ、イチャイチャタイムのところ悪いけど、そろそろ行くよ」


俺とルーナは、レイスの言葉で正気に戻り、すぐさまお互いの体を離した。ルーナは、片肘を掴みながら顔を真っ赤にして、斜め下に軽く俯いていた。一方の俺も、気恥ずかしさでルーナの顔を見れずにいた。


すると、何やら狂気に満ちた視線を感じて、視線の方向に目をやると、セバスが鬼の形相で俺を睨みつけていた。悪寒が走り、俺は思わず身震いをする。一方のクレアは、ぎこちない笑顔を俺達に向けていた。


(何だよ、このカオスな状況は……とりあえずレイスの話を聞いて、場を変えねぇとな)


俺は、セバスとクレアの方を極力見ず、レイスの方に視線を集中させた。


「レイス、どこに行くんだ?」

「あー、お祭りだよ」

「祭りかー!いいな、それ!」

「でしょでしょ!みんなで行ったら楽しい事間違いなしでしょ!」

「そうだな!ところで、祭りって何の祭りなんだ?」

「あー言い忘れてた。魔術師対抗戦の前日祭だよ」

「えっ……」


俺は、その言葉の瞬間、頭の中が真っ白になっていった。


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