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魔術塾対抗戦 vol.22

目の前の狼は鋭い牙を光らせ、獲物を狩るような目でこちらを見ていた。俺は、狼の視線の恐怖さに思わず身震いしてしまう。


「あいつ、やばい雰囲気しかしねーよ。フラム、どうすりゃいいんだ」

俺は、身震いした体を両腕で抑えながらフラムの方を見やった。すると、フラムはただ狼の方を一直線に見つめていた。


(もしかして、フラムのやつ!やる気満々なんじゃね!)

フラムの真剣な表情に期待が高まる。さすが俺の使い魔だ。


「フラム!炎龍としてのお前の実力見せつけてやれ!」

俺は、狼の方を指差してフラムに呼びかけた。だが、フラムは動こうとしない。聞こえていないようなので何度も呼びかけたが、動く気配すらない。


「おい、フラム!一体どうしちまったんだよ!」

俺はフラムの前足を掴んで軽く揺さぶった。すると、フラムはゆっくりとこちらを向いて口を開いた。


「しょ、翔太……俺、怖くて……おしっこ漏れそう」

フラムの顔から冷や汗が滝のように流れ、声が小刻みに震えていた。俺は思わず拍子抜けして、間抜けな表情をしてしまう。


「どういう事だよ、フラム!お前最強の炎龍なんだろ!」

「だって怖いもんは怖いんだもん!仕方ないじゃん!翔太だって震えてたじゃん!」

「べっ、別に震えてなんかねぇよ。ちょっと風邪気味なだけだ。こんな相手に俺がこっ、怖がるわけねぇだろ」

「嘘だ嘘だ嘘だーー!!絶対怖がってたもん!」

「だから、怖がってねぇって言ってんだろ!」

俺とフラムはお互いの額を擦り合わせていがみ合っている。すると、何か遠吠えのような声が俺達の耳に入ってくる。恐る恐る声のする方にゆっくりと視線を向ける。


視線の先には、狼が鋭い爪でガリガリと地面を削り、先程とは比べものにならない程のおぞましいオーラを放って、こちらを睨みつけていた。


再び俺とフラムは視線を戻しお互い向かいあった。明らかにお互いの表情は強張っている。

「フラム、これって……」

「翔太、この感じ……」

おもむろにもう一度狼の方に視線を向けた瞬間だった。狼は大きな唸り声をあげて、こちらへ勢いよく迫ってきたのだった。


悲鳴をあげてすぐさま逃げる俺とフラム。しかし、狼のスピードは凄まじく、俺達との距離はもう数十センチ程に近づいていた。


「翔太ー!!このままだと俺達食われちまうよー。どうにかしろよー」

フラムは、両翼を全力で羽ばたかせ、今にも泣きそうな表情をしていた。

「分かってる!!どうすりゃいいんだ……」

俺は、走りながら頭をフル回転させていた、その時だった!狼が、勢いよく飛びかかってきたのだ。


「危ない!!」

俺は体をくねらせて狼の強襲から間一髪避けた。幸いにも、自分の体には傷はついてなく、狼の鋭い爪で履いていたズボンに10センチ程の傷がついて破れただけであった。


大きくため息をつき、ホッとしたもののすぐさま狼は追いかけてくる。休む暇なく逃げ惑う俺とフラム。俺は、走りながら破けたズボンの箇所をチラリと確認した時、頭の中で豆電球が光るようにアイデアを閃いた。


「フラム!俺の肩に掴まれ!」

「何でだよー!」

「良いから!俺に考えがある!」

「どうせろくな考えじゃないんだろ」

「まあ、見てろよ」

フラムは何の期待もしてないような呆れた表情をして俺の肩に掴まった。俺は、フラムが俺の肩に掴まった事を確認した後、ホルダーから普通の杖を取り出した。数秒間、目を瞑りイメージをした後、杖を自分の足元へと向けた。


「術式を構築!術式解放!我にスピードを与えよ!」

魔術が発動された瞬間、俺は魔術の推進力によって、通常の3倍程の速さで走る事に成功した。狼との距離がどんどんと遠ざかっていく。


「どうだ、フラム!これであいつから逃げ続けられるぞ!」

「翔太、意外にできるじゃん、魔術!」

「あったりめーよ!」

俺とフラムは、前方を見ず、顔を見合わせてニヤニヤしながら、喜びを共有していた。しかし、その喜びの時間も長くは続かなかった。


俺達は、顔を見合わせたまま、何か壁のようなものに勢いよくぶつかり、そのまま気絶してしまったのだった。

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