魔術塾対抗戦 vol.21
俺達は、ルーナが魔術によって形成した水の壁の前へと到着する。ルーナは、イメージ力が尽きてきたのか苦しそうな表情を浮かべていた。
「おい、ルーナ!そろそろ限界だろ?」
セバスがチラリとルーナの方を見る。
「うっ……うん。さすがにきつくなってきたわ」
「ふん。それじゃあ、俺に任せろ。ルーナ!水の壁を破壊して、使い魔に激流を浴びせてくれ!」
「分かったわ」
ルーナは、魔銃の引き金を引くのを止めた。すると、水の壁は壁としての機能を保つことが出来ず、津波と化した。一方の、セバスは何か企んでいるような怪しい笑みを浮かべ、鞘から魔剣を取り出した。数秒目を瞑り、イメージ構成を行う。そして、キリッとした目を見開いた。
「術式を構築……術式解放!ラーガ・バレーノ!」
セバスは津波に向けて、横一線に魔剣を1振りする。それと同時に魔剣から稲妻が広範囲に発せられ、津波と同化していく。そう、セバスはルーナの水属性魔術を活かし、使い魔達を感電させる狙いなのだ。
(やっぱり、こいつすげぇ!俺にもこんな実力があれば……)
俺の心には、素直な尊敬と共に悔しさがジリジリと湧き上がってくる。思わず強く拳を握ってしまっていた。
高電力を帯びた津波は、使い魔達に襲いかかった後、稲妻の熱によって徐々に蒸発していく。その影響で辺りは白い蒸気に包まれて、視界が悪くなる。他のメンバーの姿も確認する事が出来なくなるほどであった。
(このままじゃ状況が把握できねぇ)
俺は、自分の視界だけでも良くしようと、腕で白い蒸気を払いのけていた。しかし、どんどんと蒸気は形成され、自分の行動は無意味なものとなった。
すると、誰かが強烈な風を巻き起こし白い蒸気を吹き飛ばした。視界がはっきりして見ると、クレアが魔剣を構えていた。どうやら得意の風属性魔術を発動したようだ。
「クレア、すげぇーよ!ありがとう!」
「いえいえ、そんな事ないです!」
俺の言葉に、頬を赤らめて恥ずかしそうな表情を浮かべるクレア。
「翔太。感激するのはまだ早いんじゃないの?」
レイスが俺の服をツンツンと引っ張り、目の前を指差した。俺はレイスの指差す方に視線を向ける。そこに映った光景に俺は唖然とした。凶暴化した使い魔5体は、1体も倒れていなかった。そして、俺達と1対1で対峙する。
「おい!レイス!どうなってんだよ!セバスの魔術で倒れたんじゃないのかよ!」
「確かにセバスの魔術でダメージは与えられたとは思うけど、さすがこの魔術師候補生の使い魔だけあって、そう簡単にはいかないようだね。そうだろ、セバス?」
「チッ、一筋縄ではいかないようだな」
セバスは歯を食いしばり悔しそうな表情を浮かべていた。
「じゃあ、早速目の前にいる使い魔を退治しますか!何かきれいに向き合ってるから目の前の使い魔が僕達の相手って事でオッケー?」
「りょーかい!」
レイスの問いかけに、ルーナ、セバス、クレアが応じる。俺もうなだれながら気弱な声で返事をした。
俺は顔を上げ目の前の視線に目をやった瞬間。その相手の姿に、俺は驚きと恐怖で生唾をゴクリと飲み込んだ。
そう、俺の目の前の使い魔は、クラスメイトを殺したあの狼であった。




