魔術塾対抗戦 vol.19
「うん、ドンマイ……プッ」
レイスが俺の肩をポンと叩く。慰めているようだが明らかに笑っている。まだクラス全員の笑いが絶えない。
「レイス、全くフォローできてねーぞ!それよりも一体、これはどういう事なんだ?」
「んーたぶんだけど、翔太は魔術に触れ始めたばっかりだから、イメージ力が全然足りないんだよ。だがら、使い魔を現界できたとしてもそれを戻す力は残されてなかったって事なんだろうね。まあ、この世界の人ならこんな事は普通は起こらないんだけどね。こういう展開も翔太らしいよ。うんうん」
レイスは顎に手を置き納得の表情を浮かべる。一方の俺は、自分の能力の無さに虚しくなる。
「じゃあ、これからこのマスコットをどうすればいいんだ?」
「誰がマスコットだ!コンニャロー!!!」
俺の頭に噛み付いたままのフラムは更に力を強める。
「痛い痛い痛い!訂正するから!力弱めろよ!とにかく、レイスどうなんだ?」
「そうだねー。翔太のイメージ力が十分になるまでは、フラムは現界したままだから共同生活になるね。良いじゃん!ペットみたいで!うはははっ!」
「共同生活……だと?」
俺は、フラムとこれから共に過ごさないといけない事に心の中で嘆いた。うまくいくわけがない。先が思いやられる。
フラムはレイスの言葉を聞いて、噛み付いていた俺の頭から離れると、パタパタと翼を羽ばたかせて俺の目の前に現れた。前足を腰において堂々とした姿を見せているが、マスコット感が強いためか何も凄みを感じない。
「まあ、仕方ねぇな!一緒にいてやるよ!とりあえず、お腹空いたから肉食わせろ!」
「はぁー!なんでテメェが命令してんだよ!お前は俺の使い魔なんだぞ!主人の言うことを聞くのが普通だろうが!」
「うるせぇよ!俺はテメェを主人なんて認めたことねーからな!コンニャロー!!」
俺とフラムはお互いの額をくっつけていがみ合う。そんな姿にクラスの笑いはまだ止まる事がない。
「良いじゃん!良いじゃん!」
「ケンカするほど仲が良いって聞くぞ!」
「私もあんな可愛いペット欲しいー!」
周りから口々に言葉が飛び交う。しかし、俺にはそれがヤジにしか聞こえない。
「クスッ。はいはーい!みんなもう授業に戻るよ」
ルーナが両手を叩き、クラス全員に呼びかける。徐々に笑い声は小さくなっていく。
「みんな使い魔を限界できたところで、いよいよ使い魔との連携術をスキルアップさせましょうって、ん?あれっ?」
ルーナが空を見上げると、先ほどまで晴天だった空がいきなり灰色模様へと変わっていた。そして、天からポツリポツリと大きな雨粒が落ちてくる。クラスのみんなも空を眺める。
「はぁー。仕方ない。雨降ってきたから授業中止ね。みんな教室に戻るよ」
ルーナが全体に呼びかける。
しかし、この空がこれから起こる不吉な事態の幕開けを合図していた事は誰も分かっていなかった。




