魔術塾対抗戦 vol.18
「えっ……」
見間違いじゃないかと思い目をこするが、目の前の光景は同じであった。俺は、口をポカーンとしたまま横にいるレイスの方をゆっくりと向いた。すると、同じ表情をしたレイスも同じタイミングで俺の方を向いていた。
数秒間沈黙が続いた後、レイスがクスッと1つ小さく笑い出し、次にはお腹を抱えて大笑いし始めた。
「しょーた、おもしろすぎるでしょ!やっぱ期待を裏切らないわ、ほんとに!」
そんなレイスにムッとしたものの、やはり才能が無いと自覚する俺。
うなだれながらも、斜め上の方でパタパタと両翼を羽ばたかせている使い魔をもう一度見た。
俺の使い魔?であるその小さなドラゴンは、前足?を組んで誇らしげな表情をしている。そして、俺に語りかけてきた。
「お前は俺を呼んだ!つまり最強の魔術師ということだな!だって、俺が最強だからな!」
目の前の使い魔の発言に訳が分からない俺。どう見たって最強なはずがない。かわいさ、いやマスコット感は最強かもしれないが。俺は首を傾げてドラゴンを見つめる。
「何だその反応わーー!!俺を疑ってるのかお前は!!」
「いやいや、疑うでしょ……最強なんて微塵も感じないよ。」
「馬鹿にすんじゃねーよ!俺はどんな物も焼きつくす史上最強の炎龍、フラムなんだぞ!」
大声で自分の名を叫んだ使い魔にみんなの視線が集まる。そして、時間が止まったかのような静けさがエスタディオに流れた後、すぐにエスタディオ中が爆笑の渦に飲み込まれた。
「うわはっはっはっ、冗談やめろよ!お前がフラム?あり得る訳ないじゃん!お前、ちびっ子がスーパーマンになるって言ってんのと同じだよ、それ!」
レイスが涙を流しながらフラムに言う。周りの生徒達も笑いながらレイスの発言に同意する。
そんな俺は「フラム?最強の炎龍?みんなが知ってる?」だといった感じで脳内にハテナが次々と浮かぶ。
「なあ、レイス。フラムって何なんだ?お前ら知ってんのか?」
「知ってるも何も、ラグーンの象徴なんだよ、炎龍フラムは!その昔、ラグーンの災難から人々を救ったとされている伝説のドラゴンなんだ!ラグーンの歴史書には必ず出てくるし、絵も描かれてるんだけどめちゃくちゃかっこいいんだよ。それがこんなマスコット感満載のやつだなんて……ありえないよ、ほんとに。あーやばい!何度見てもおもしろすぎる!うわはっはっはっ!!」
とうとうレイスは地面に膝をついて自分を抱え込むようにして笑い声をあげている。
「もーー怒った!!どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがってー!!許さないぞー!!これでもくらえーー!!」
フラムは口を大きく開けて、勢いよく炎を放った。
しかし、フラムの炎は焚き火ほどの大きさで、レイスの目の前にポトリと落ちていった。
その姿にさらに爆笑の声がエスタディオ中に広がる。
フラムは、うわぁーーーっと可愛らしい声で叫ぶとすぐさま俺の方を見て、俺に説教をし始めた。
「おい!お前のせいだぞ!お前のイメージ力が足りないからこんな事になったんだぞ!赤っ恥だよ!ほんとに!」
「はぁ~?なんで俺のせいなんだよ!それにお前!赤っ恥って……見た目も赤いから全然わかんねーよ!何が最強だ!炎龍フラムさんよー!」
俺は、フラムの説教を嫌味混じりで返す。
「クッソーーー!お前もとことんムカつくやつだな!お前の使い魔だなんて俺は絶対認めないからな!」
「はいはい、わかったわかった。俺も認めてねーから」
「クゥーーーー!コンニャローーー!!」
怒りに満ちたフラムは俺の頭に噛み付いてきた。頭に鋭い牙が突き刺さり激痛が走る。俺は痛みのあまり大きな声で絶叫する。頭を勢いよく左右に振り、振り払おうとするが、フラムは離れようとしない。前足と後ろ足でガッチリと俺の頭はロックされていた。すさまじい力だ。
そんな光景にみんなの笑い声は一段と大きくなっていく。なんて恥ずかしいんだ、なんて情けないんだ。痛みと共にネガティヴな感情しか湧いてこない俺。
「ちょっと、翔太。これじゃあ、授業にならないわ。早く使い魔の限界をやめなさい。みんなが笑い死にしちゃう」
クスクスと笑いながら誰かが大きな声で呼びかけた。
声が聞こえた方向を向くと、笑いで流れた涙を拭っているルーナだった。
ルーナは、クラス全員が見渡せるようにお立ち台のようなところに立っていた。
「ルーナ!どうやって辞めるんだよ!」
「簡単よ!使い魔よ戻れと唱えるだけだから!」
「よし!わかった!!」
俺は、フラムに杖を向け大きな声で叫んだ!
「使い魔よ!戻れ!」
すると、噛みつかれていた頭が軽くなっているような気がした。
頭をロックされている感覚もない。
(よし、やったか……)
俺は、上目で頭の方を見やった。
すると、両足を離したままのフレヤと目が合った。
お互いキョトンとした表情を浮かべる。
「えーーーーーーーーー!!」
俺は数秒間フラムと見つめあった後、予想外の事態に思わず叫んでしまっていた。
そう。また、俺の期待はすぐに裏切られてしまったのであった。




