魔術塾対抗戦 vol.13
「あー、我が主人様よ。ご機嫌はいかがでしょうか。」
屍のすぐ右横にいる者が、屍の右手をさすりながら語りかける。
他の7人は、左胸に手を当て何やら祈りのような言葉を口ずさんでいた。
(おい待て待て。なんだこの空間。屍が主人だと?)
その異様な光景に頭が混乱すると同時にこの場から早く逃げ出さないとという気持ちが溢れてきた。しかし、恐怖心からなのか体は氷のように固まり立ち上がることすらできない。
「我が主人様の意志を受け継いだ我らにとって、あの男の生き血は必要不可欠なものである。」
黒いローブの誰かが話し出す。
「あの男の生き血が無ければ我が主人様の復活は叶わない。我らが、ファフニールの紋章にかけてこれは必ず手に入れなければならない。主人様と我らの悲願のために。」
別の黒いローブの者が語り出す。
「ブイオよ。手はずは整えておるのか。」
先ほど屍の手をさすっていた者が、一番手前つまり扉の近くに座るものを指差しながら言う。
「クックックッ。整っていますとも。我が主人様のためならば、私はこの身を粉にしてあやつを生け捕りにして差し上げます。」
(この笑い声。どこかで聞き覚えが…もしやあの時の…)
キマイラを倒した後の事を思い出した。
姿は見せなかったものの確実にその声は聞こえていた。
「ホホーッ。なかなか誠意のある者よのー。果たしてその手はずはどういったものであるのか。」
屍の右横に座っている者がブイオという者に言う。
「それは後のお楽しみですね〜。ですが、皆様方に彼を紹介いたしましょう。」
ブイオは、そう言うと人差し指と親指をこすり、パチっと音を鳴らした。
すると、ブイオの後ろから黒い妖気と共に現れた。その者は、黒いローブのフードを深くかぶっていた。
「クックッ、それでは紹介いたしましょう!我が家臣よ、皆に顔を見せよ!」
ブイオの言葉と共に、ブイオの背後にいる者はフードに手を掛け、ゆっくりとフードを持ち上げ、顔をあらわにした。
その姿を見た瞬間、心臓が一瞬止まるかのような衝撃が走った。
そこに立っていたのは黒ぶちメガネをかけた男であった。そう、選抜者発表でジャック塾長に不服を訴えた同級生、ユークリッドだ。
(まさか…あいつが…)
予想外の展開に困惑する。
「我が主人様。この身は、主人様に忠誠を誓っております。」
心臓に手を当て、不敵な笑みを浮かべながら軽く会釈をするユークリッド。
そして、会釈をやめると、扉の方をキリッと睨みつけるユークリッド。
(やばい…見つかったか…)
覗いていた扉の隙間から顔を離す。
焦りで呼吸がおかしくなっているのを何とか抑え、恐る恐る再び覗いた瞬間であった。
ユークリッドがこちらを睨みつけたまま何かを呟いたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚める。目線の先には真っ白な天井が見えた。
「夢か…」
俺はホッと胸を撫で下ろすと同時に脳裏に疑問が浮かぶ。
「あいつは一体何を俺に向かって言ったのだろう…」
俺の顔は、寝ていたせいなのか夢の恐怖心からなのか分からないが自然と汗が滴り落ちていた。




