元の世界へ vol.6
黒い妖気から現れたのは、悪魔のような獣であった。
「我はガーゴイル。さあ、君の実力を見せてもらおうかな〜、翔太くん。」
ガーゴイルは、鋭い爪の右手を俺の顔面めがけて突き刺そうとしてくる。慌てて避ける俺。ガーゴイルの右手は、コンクリートの壁に突き刺さっていた。俺の顔のすぐ真横に。
「間一髪だね〜。じゃあ、次は左手で攻撃しちゃおっかな〜。」
すぐさまガーゴイルの左手が俺の顔面めがけて襲いかかる。また慌てて避ける。鋭い爪が俺の左手頬をかすめる。俺の左頬から血がつたう。
(そろそろ対抗しねーとな。このままじゃ、俺達デッド確定だからな。とにかく杖で…)
俺は自分の腰に手を回したが、杖が無い。今朝、急いでスーツに着替えて出てきたせいで、完全に杖を忘れてきてしまった。
(やばい…とにかく安全なとこまで逃げねーと。)
ルーナを抱えて、逃げようと立ち上がるが、目の前にガーゴイルが、すぐに立ちふさがる。冷や汗が止まらない。
「あれれ〜?何で逃げるの〜、翔太くん。もしかして、杖が無いとか?それじゃあ〜つまんないよ〜、翔太くん…もう、翔太くんとその女殺すしか無いね。」
そう言うと、ガーゴイルは右手を大きく振りかぶり、俺たちを払い飛ばした。ルーナをかばいながら、また俺はコンクリートの壁に打ち付けられる。衝撃で頭から血が流れ落ちる。もう意識は朦朧とした状態になっている。
「フッフッフッ。翔太くんもあの杖が無ければ、何もできないただの無能な人間なわけだね〜。本当につまらないな〜。さっさと死んでもらうよ、翔太くん。」
ガーゴイルの鋭く尖った爪が俺の心臓にめがけて勢いよく襲いかかってきてるのが、かすかに見えた。
(もう…終わりか…)
俺が死を覚悟した時だった。俺の心臓に突き刺さる寸前でガーゴイルの右腕が地面に落ちる。
「ヒッヒッ!誰だ!我の右腕を切り落としたのは!!」
ガーゴイルがうめき声と共に叫び出す。
すると、ガーゴイルの背後、つまり俺の視線の先には白いローブを着た何者かが立っていた。そして、その白いローブを着た者の右手には魔法の杖が握られていた。
「杖よ。血の契約を交わせ。」
白いローブの者が呟く。
「血の…契約…魔法…つ…かい…」
俺は、力の無い声で呟きそのまま意識を失った。




