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約束 vol.5


案内されたのはリビングのような空間だった。俺は、その広さと高そうな家具や雑貨に思わず目を奪われる。ソファーを見を向けると、ルーナが本を読んでいた。


「あんた達来てたんだ。」

涼しげな表情を浮かべこちらをチラリと見るルーナ。


「ルーナ、てめぇは相変わらず丈夫な女だな。もっと、女らしい弱さとかねぇの?」

嘲笑して言うセバス。


「またまた〜、そんな悪態ついちゃって〜。ほんとは、ルーナの事が心配で心配で仕方なかったんでちゅよね〜」

レイスが口をアヒルのようにして、ニヤニヤしながらセバスを煽る。


「あっ?」

レイスを睨むセバスと笑顔でセバスを見るレイス。

その光景に俺とクレアとルーナ、さらにはルーナのお母さんまで笑い出した。


「何笑ったんだよ?てめぇら!」

セバスが高圧的な声で言う。ただ、視線は完全に俺の方を向いていた。


「相変わらず、セバスくんとレイスくん仲良いのね〜」

ルーナのお母さんが笑顔で言う。


「仲良くねぇ!!!」

2人が声を揃えて言う。その光景にまた爆笑する俺達。


「あっ、そうだ。翔太くん、まだ自己紹介してなかったわね。ルーナの母親のミリアです。今後ともよろしくね、未来の旦那さん。」

「もう、ほんと旦那さんじゃないですから!あのー、佐藤 翔太です!」

慌てる姿に笑い出すレイスとミリア。そんなクレアは、どこかぎこちなさを感じる笑顔を浮かべ、セバスはキリッと俺を睨み出す。

一方のルーナは、我関せずといったようで、何も否定せず、ただ本に視線を向けていた。


(あれ?ルーナ…なんで否定しないんだ。いつもだったら必死になって否定するとこだろ?)

いつもと違うルーナを疑問に思う俺。


「さあ、うちのパパさんもそろそろ帰って来る事だし、みんなで夕飯食べましょう!今日は豪華よ〜!さあ、みんな手伝って!」

ミリアの掛け声でみんなが食器やご飯を運ぶ。ちょうど、食事の準備が終わった頃、ジャック塾長が帰って来た。


「おー!みんな揃ってるじゃないかー!早速、みんなでご飯食べよう!楽しみだな〜!パーティの始まりだー!!」

いつも以上にテンションが高くなっているジャック塾長。


テーブルには豪華な食事が並べられ、ミリアがワイングラスにお酒を注いでいく。

「さあ、準備オッケーだね!みんなグラスを持って!」

ジャック塾長はグラスを片手に持ち立ち上がる。俺達も座ったままだが、グラスを持つ。


「今日はルーナちゃんのために来てくれてありがとうね!それでは、カンパーイ!」

「カンパーイ!!」

乾杯の合図とグラスが重なるきらびやかな音共にパーティーはスタートした。


ジャック塾長が口を大きく開けて、ルーナにあーんをせがむ。しかし、ルーナはさめた表情で、人差し指と中指で塾長の目を潰し、「キモイ」と言い放つ。

「ルーナちゃん、ひどいよ〜。パパなんだよ〜。」

泣きじゃくるジャック塾長にミリアが

「あなた本当に気持ち悪いわよ。」

と追いうちをかけて、さらに泣きじゃくる。


一方のレイスとセバスは、子供みたいにチキンの取り合いをしている。どっちが大きいチキンを食べるかという取り合い。案外セバスも子供っぽいところがある。

俺の右隣にいたクレアは、ミリアお手製のケーキを幸せそうに食べている。その姿に、俺はかわいいと思い頬を染める。そして、なぜか左隣にいたルーナに殴られる。

どれもこれも楽しくて、笑いが絶えない。だが…


(久しぶりだな、こんなに楽しい時間は。けど、この楽しさも一瞬で終わってしまう…)

俺は、こんなに幸せで楽しい時間が過ぎていく事に寂しさを感じていた。


「うー食べ過ぎた。ちょっと夜風にあたってきます。」


俺は1人になりたくなり、外に出て庭の芝生に寝転がり星を見ていた。


「どうしたの、翔太?」

ぼんやりと星空を眺める俺の顔を覗き込むルーナ。

「ルーナ、邪魔。星空見えないから。」

俺は真顔でルーナを見つめる。


「何よそれ!人が心配してきてあげたのに。」

そう言うと、ルーナも俺の横に寝転がり、2人で星空を眺めていた。


しばらく沈黙が続く。


「ねぇ、翔太。食べ過ぎたの嘘でしょ。何かあったの?」

「いや…俺、あんまり慣れてなくて。ああいう感じ。」

「苦手なの?」

「苦手じゃないんだけどね…むしろ楽しいんだけど…」

すると、なぜか一粒の涙が頬を伝っていた。


「翔太、その悩み聞くの私じゃダメかな?」

ルーナの方を見ると、俺に優しく微笑みかけていた。俺の悩みを溶かしていくような優しい微笑みであった。


「俺、小さい時から親父と2人で暮らしてて…仲はいいんだけど、親父の仕事もあるから1人でご飯食べる事多くて…母親の手作りとかも食べた事ないし、家族団欒とかも経験した事ないんだ。だから、今の食事が本当に楽しくて…このままこんな楽しい時間が続けばと思っても終わりはいずれやって来るから…寂しくなっちゃって…」

「そっか…。ごめん、私なんて声かければいいかわからなくて…。そうだ、あの約束覚えてる?」

「約束?」

「ほら、用具室の整理手伝う代わりにパフェ奢るってやつ。それさ…翔太の世界のパフェ、一緒に食べに行きたいんだけど…ダメかな?」

「うん、いいよ。」

「ありがと。約束だよ。」


俺とルーナは、自然と小指と小指で指切りをしていた。繋がれた指からルーナの熱が伝わってくる。それは、俺の心の寂しさを温かく包み込んでくれるようだ。


「星、キレイだね。」

「うん、キレイだね。」

俺達は小指で繋がったまましばらく綺麗な星空を眺めた。

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